男性に好意を持たれると引いてしまう”カエル化現象”に悩むサブカル女子がカウンセリングで過去の自分と向き合ってみた
恋人、いますか? 筆者(25歳女子)は2年半以上いません。昨年から恋活・婚活パーティーに参加し、マッチングアプリ4つを駆使して頑張っていましたが、今も独り身。でもいろんな人と出会ううち、ある傾向に気づきました。
それは「好意を見せられた途端、相手のことを嫌いになってしまう」。男性の態度や言動から「自分が好かれている」と感じると、徐々に相手に拒否感を覚え「この人ムリ!」となります。
実はこれ、“蛙化現象”というそうです。由来はグリム童話の「かえるの王さま」。王女が魔法を解き、蛙を王子様の姿に戻して2人幸せに暮らす話です。”蛙化”はこの逆で「王子様だと思っていた人が気持ち悪く(=蛙)なる」ことを指します。
もしや筆者、蛙化現象のせいで恋人ができないのでは……? この原因を探るべく、電話カウンセリングサービスの「ボイスマルシェ」で相談に乗ってもらいました。(文:市ヶ谷市子)
「この問題、深いです。勘違いしてます、素敵なんですよ!あなたは!」に困惑
話を聞いてもらったのは、恋愛・婚活相談が得意な心理カウンセラーのTさん。お写真を見ると30代後半ぐらいの落ち着いた雰囲気の女性です。まずウェブで予約時間を選び、事前に悩みを入力して、送信。当日は時間指定した14時ピッタリに電話がかかってきました。
優しい声色のTさんから、まず「好意を向けられたら拒否感を抱いてしまうとのことですが、何でだと思いますか?」と聞かれました。飲んだくれの筆者は、恋人に「君より〇〇の方が好き」と言われて振られることが多いです。だからか「こんなヤツを好きになる人おかしい」と思ってしまいます。
特にこの3年、蛙化現象が激しくなっているように感じます。そう話すと、Tさんに「その時期何があったかお話しいただけますか?」と聞かれました。
筆者「そういえば、元彼と一緒に飲んでいた時『元カノとヨリを戻そうと思う』と言われて、また別の女の選ぶパターンか、と思った記憶が……。それ以降、頻発してる気がします」
Tさん「なるほど……。さっきも”私みたいなヤツ”って言いましたけど、この問題、深いんですよ。まず市子さん(筆者)、勘違いしてます。素敵なんですよあなたは!」
思わぬところで突然褒められて、笑ってしまいました。だって誰にも選ばれてないじゃないですか。でもTさんは「この前提を自分で設定して、それに引きずられてしまっている」と指摘します。こう思うようになったきっかけを探すため、家庭環境や現状を聞かれました。
筆者「両親が離婚していて母に育てられたんですけど……そういえば、高校生のとき一度、母に縁を切られそうになりましたね。でも今は友人みたいな関係です」
Tさん「……そのとき、どんな気持ちでしたか?」
聞かれた瞬間、カウンセリング開始5分にも関わらず号泣してしまいました。この件は既に母にも謝られています。筆者も気にしていないと思っていたのですが、泣いている自分に驚きました。「そのとき、ちゃんと泣けましたか?」当時は全く泣けませんでした。
「母の敵=父=男=自分の敵」という理論が根付いて大変なことになっていた
Tさん「受け止められなかったですよね。今も大人の頭で『友人のように』って言っている。確かに、お母さんは、イライラが積み重なって言ってしまっただけだと思います。でも、親子2人で頑張ってきたのに自分を否定された気がしますよね」
その通りです。色々理由があったとはいえ、やっぱり悲しかった。Tさんに「泣けなかったですよね、愛されたいから。わがまま言えない、愛されたいから。お母さんを好きだから言えなかったんですね」と言われ、当時の気持ちを代弁されている気がしました。
また、母はあまり父のことを話さないのですが、「お母さんとしては、お父さんは敵、と思わなければやっていけなかったのかも知れません」とTさんは指摘します。
Tさん「市子さんはお母さんの”味方”になって好かれようとしていたから、母の敵は自分の敵と思っていたんです。でもそうじゃないんですよ。両親が離婚したからって、あなたがお父さんに捨てられた、選ばれなかった訳ではないんです」
ここれでまた涙腺が崩壊します。本当は父がいないことはコンプレックスだったし、無理やり気にしないようにしていました。この「母に嫌われたくない」「選んでくれなかった父に愛されたい」がこじれて、筆者の中では以下のような”前提”ができていました。
・自分のことを「愛されてない」「選ばれない」人間だと思う
・「母の敵=父=男=自分の敵」という方程式
・「いつか捨てられるなら、最初からいらない」と関係性を築かないようにする
筆者がセカンド女子だったのも、恋人がほしいのに近づいてくる男性には拒否感を示し、実は「またダメだった」ということに安心したのも、この前提があったからでした。
「『愛されたい』っていうのは、愛されてないと思ってるから出る言葉」
蛙化の原因はわかりましたが、どうすれば治るのでしょう。Tさんは「人って、顔の表情と言葉が一致しないと違和感を持ってしまって、信用できないんです」といいます。確かに「それって本心で言ってんの?」とよく友達に言われます……。
Tさん「本当に思ったことを話してください。それだけで変わります」
そう考えるとデートのとき、可能な限り”最高の自分”を作り上げて、話を合わせ、好かれようとしていました。でもそれは”作った自分”です。だから好意を寄せられても、どこかで「作りものだと見抜けないなんてダメな男」と思い、拒絶することで”敵”を倒していました。
そりゃ恋人もできないですよね。そもそも婚活で勝手に”母親の代理戦争”をやっていたなんて、相手からしたらいい迷惑です。
Tさん「『愛されたい』っていうのは、愛されてないと思ってるから出る言葉。そしてその言葉に引っ張られて『やっぱり愛されない』という方向に、自ら行ってしまうんです。逆に『絶対愛される』と思ったら、絶対愛されるんです」
ネガティブな感情に引っ張られないコツは「自分が何が好きかを知ること」。映画が好きならどのシーンで心が動いたのか自分の感情をちゃんと認識し、”好き”に触れたときの心地よさを認識します。すると自然と本当に出会いたい男性像が掴め、相手を引き寄せられるとのこと。
また「人に甘えて」とも言われました。例えば、重いから持ってほしい、蓋が開かないから開けてほしいって、本心から出る言葉ですよね。自分の気持ちを口に出せば、ちゃんと本心が表現できる、つまり”本当の自分”が表に出て来る。
Tさんは「相手は鏡。自分の態度がそのまま映っていると思ってください」といいます。嫌われると思ったら本当に嫌われるし、本心を出せば相手も本心を出す、と。ちなみに「一生愛される女性は”甘え上手”」なのだそう。
Tさん「市子さんは親に甘えられなかったし、今も男性に甘えられないんじゃないですか?」
そうなんです。嫌われると思って、できませんでした。でも本当の自分を出して否定されたら、と思うと怖くないですか?
Tさん「それは相手を信頼してないからです。市子さん、自分の好きなものを否定されたら傷つく人でしょ。傷つく必要はないんですよ、彼は否定したんじゃなくて意見を言っただけ。あなたを否定しようとしたんじゃないんです。まずは自分を出して、相手を信じてみてください」
カウンセリングで「自分の勝手な思い込み」に気づく
Tさんのカウンセリングは、ひたすら無視していた感情と向き合って”思い込み”を解除していくものでした。あと何度も「市子さんは愛されてるんです」「絶対愛されてます」と言われまくりました。ずっと泣いてたんですけど、終了後も「本当は私めっちゃ愛されてたー!」と更に号泣して、スッキリしました。
蛙化現象を治すには「なぜ拒否感を抱くのか」という原因探しが重要になります。筆者は昔の寂しさを”恋人”に埋めて貰おうとしていました。でも心の奥では男性を敵だと思っているから好意を寄せられても気持ち悪さを感じてしまう、この齟齬が原因でした(これを埋める方法も教えてもらいました)。
カウンセリングを受ける前は「初めて話す人に、家庭環境が云々なんて言われたくない」と思っていました。でもカウンセリングは「こう仮定すると、今のあなたの説明がつきませんか?」という感じだったので自分としても腑に落ちました。
これは1人で悶々と考えてもたどり着かない結論でした。話を聞いて「それは勝手な思い込み!」と指摘してくれる人がいたから分かったことだと思います。感情の整理や折り合いがつかなかったとき、整理するためにカウンセリングを受けるのも手ではないでしょうか。解決策は自分の中にある、のかもしれません。