企業の6割「東京五輪に向けたリスク対策を検討していない」 背景には「具体的な影響算出できない」「スキル・知識が足りない」
ニュートン・コンサルティングは7月24日、新建新聞社と共同で実施した「東京2020大会に向けた企業のリスク対策実態」の調査結果を発表した。調査は今年6月にインターネットで行い、民間企業のリスクマネジメント担当者329人から回答を得た。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、延べ約1010万人、1日あたり最大92万人の来場が予測され、大きな経済効果が期待されている。その一方で、主要道路等に様々な交通規制がかかり、従業員の移動や宿泊、物流などへの影響を心配する声も上がっている。
「東京2020大会に向けて発生しうる自社事業への影響評価の取り組み」を聞くと、最も多かったのは「検討していないが、今後、検討する予定」(34%)。必要性を感じつつも検討できていない企業が多いことが明らかになった。「検討していないし、今後する予定もない」(24%)と合わせると、検討していない企業が58%と半数を超える。五輪開催まで2年を切ったが、企業のリスク対策は進んでいないようだ。
一方、「既に検討した」と回答した企業は32%。検討が進んでいるのは、立地上交通の影響を受けやすい企業や、大会に関わるビジネスを行っている企業に多かった。
対策が必要だと思うリスク1位はサイバー攻撃 建設業界は首都直下地震を不安視
リスク対策の進捗状況を業界別に見ると、「金融・保険」、「サービス」、「情報産業」での対策検討傾向が強かった。一方、「卸売・小売業」や「製造業」では取り組みが遅れている。また、社内にリスク担当者の専任を配置している企業ほど、自社事業への影響評価の取り組みの検討が進んでいる事もわかった。
大会に向け、特別に対策を講じる必要があるリスクとしては、「サイバー攻撃」、「首都直下地震」、「交通渋滞や交通規制」などが多く指摘されている。
ただ、何をリスク視するかは業種別に大きく異なるようだ。卸売・小売業では1位が「交通渋滞や交通規制」、2位が「ネット速度低下・途絶」、3位が「盗難・犯罪の増加」 だった。オリンピックのメインスタジアムなどの事業に関わっている建設業では、1位「首都直下地震」、2位「台風・豪雨・竜巻」、3位「警備員の不足」と、災害や事故、事件などを強くリスク視していた。
五輪・パラリンピックに向けたリスクマネジメントの課題を複数回答で聞くと、「具体的な影響が算出できない」(52%)が過半数を占めた。「スキル・知識が足りない」(44%)「人手が足りない」(33%)も多かったほか、「全社の理解が得られない」といった、企業内部での連携の難しさを嘆く声も寄せられた。