「人生100年時代」「終身雇用はもうムリ」など、最近サラリーマンの不安を煽る種は尽きない。若手ならば会社に依存しないキャリア形成を考えて行くのだろうが、40~50代ともなると「今更どうすりゃいいの」と戸惑うばかりの人も少なくないだろう。
6月6日放送の「クローズアップ現代+」(NHK総合)は、そんなミドル層の悩みに答えていた。番組キャスターでNHKの局アナである武田真一氏(51)は、自らおじさんを自任し、「アナウンサーはつぶしが利かない職業」「しがみつくしかない」との思いを吐露していた。(文:okei)
「自分には何もできない」と萎縮するおじさんたち
人材開発コンサルタントであり、週一でバーのママとして会社員の人生相談に乗る木下紫乃さんは、多くのサラリーマンが不安を抱えていると語る。大企業だと役職定年が50代の半ばにあり、定年が60歳。65や70になるかもしれないが、「その中で、役職はなくなるし仕事も活き活きできるとも思えない、というような、漠然とした不安」として、
「どうしたらいいかわからないけれど、『自分は何者でもない』『自分には何もできない』」
と語る人が多いという。長く同じ組織で、会社の仕事に自分を合わせて真面目に働いてきた結果、別の場所で新しいことをやっていける自信がなくなっているのだ。
これに武田アナは共感し、
「分かります。アナウンサーをやっていても、30年これしかやっていませんし。アナウンサーなんて仕事はほかの会社にないじゃないですか。『ここにしがみつくしかない』と思ってしまいますね」
と語った。長年、誰でもできるわけではない仕事で活躍してきた人でも、こんな危機感を抱いているのだ。一般会社員ともなれば目の前の仕事で精一杯で、新しいキャリア形成といっても年齢的に難しく感じる人がほとんどだろう。
アナウンサーひとすじ30年がドローン事業を体験
番組では、そんな人にお勧めとして、”タニモク”を紹介。社外の人に自分の悩みや現状を共有してもらい、他者(=他人)の目線と発想で「目標を立ててもらう」というものだ。
同サービスは、人材会社が大手企業向けに行なっている「社外研修」で、例えば大手電機メーカーからベンチャー企業へ週一回勤務。弁当事業という全くの別業種にやりがいを見出している人もいた。
武田アナもこれを体験取材。相談した担当者に
「アナウンサーは一番つぶしがきかない仕事と思っている。ものすごく不安」
と胸のうちを語った。しかし相手は、「当事者の視点だから(そう思う)」と不安を打ち消し、色々な可能性があると示唆した。
研修先は、ドローンのソフトウェア開発会社だった。「これまでの災害報道の経験や蓄積をもとに新しいサービスを開発する」という目標が立てられた。
武田アナが考え出したのが、災害現場での避難の呼びかけや調査など、ドローンのより効果的な活用だ。企業は「意外とマーケットがあるかもしれない」と好感触。武田アナも「取材抜きでここに残って、この仕事をやりたい」と語るほど前向きになっていた。
自分では「他のことは何もできない」と思っていても、これまで蓄積してきた経験が、他の業種で役立つことがあるのだ。武田アナは、「全く以前は道が見えていなかった。こうやって一歩一歩やっていけば、なんとかなると思えるようになった」と希望を見出していた。
50歳前後ともなれば、さすがに「やりたいこと」と「自分ができること」は違うと悟っているだろう。だからこそ、自分のことをよく知っている人や仕事紹介のプロに相談してみるといい。勧められたことを素直に試してみれば、暗いばかりと思っていた未来に意外な道が開けるかもしれない。