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新型コロナ感染拡大で「内定取り消し」発生 弁護士に“就活生の対処法”を聞く

内定取り消しになったらどうすればいい?

内定取り消しになったらどうすればいい?

新型コロナウイルスの流行で経済にも影響が出始めている。観光関連業などではすでに倒産する企業が出ており、“リーマンショックの再来”を懸念する向きもある。

厚生労働省は3月上旬、経団連などに新卒者の内定取り消しをしないよう要請。だが、同省は9日の参院予算委で、すでに1件が発生したことを認めている。キャリコネニュースでは労働問題に詳しい佐々木亮弁護士に、内定取り消しの法的問題と就活生の対処法を聞いた。

「内定の時点で労働契約が成立している」

佐々木弁護士の周りでも、すでに内定取り消しになった就活生がいるとの話は聞こえてくるというが、まだ実際に相談に来た学生はいないという。だが、今後は増えることも十分予想される。企業側の一方的な「内定取り消し」が抱える法律的な問題点を考えるには

「まず、内定の時点で労働契約が成立していることを理解する必要があります」

と説く。契約成立後は、企業側が何の理由もなく一方的に内定を取り消すことはできなくなる。

「企業が内定を取り消すためには、内定取り消し事由が、客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として認められるものである必要があります。これに反した内定取り消しは無効となります」

内定取り消しが無効になれば、労働契約は存続する。つまり、就労始期が訪れれば、労働者は働き、企業はそれに対して賃金を支払わなければならないのだ。

また、もし企業が、その労働者に『職場に来るな』と拒絶をしても、賃金の支払い義務は消えないという。佐々木弁護士は「こうした労働契約が存続するという効果以外にも、特に新卒などの場合は、違法な内定取消がなされたとして慰謝料などの損害賠償請求をすることもできます」と付け加えた。

「企業側には高度な内定取り消しの理由が求められる」

では、新型コロナウイルスの感染拡大による経営圧迫は”客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として認められる”ということになるだろうか。佐々木弁護士は

「就活生側には責任がないにもかかわらず、内定が取り消されることになりますので、(企業側には)どうしても内定を取り消さねばならかったという、高度な内定取り消しの理由が求められます」

と解説する。一般に内定取り消しになるのは、履歴書の詐称や、内定後の健康状態の悪化など。過去には、銀座のホステスでアルバイト経験があったことを理由に、日本テレビの内定を取り消されたアナウンサーもいた。裁判に発展した末に和解し、2015年に無事に入社している。

厚生労働省によると、東日本大震災の発生から半年で469人が震災の影響で内定取り消しを受けた。この当時、取り消しを受けた就活生が訴える素振りを見せたところ、企業側から示談金が支払われた、という報道が話題になった。

佐々木弁護士はこうした企業側の対応について

「もし裁判を起こされると企業に敗訴リスクがあったり、また、そもそも景気が悪化している中で内定取り消しの訴訟を起こされることへの対応のコストなどもあり、早々に就活生側に示談金を払って解決を図ったものと考えられます」

と考察している。

「内定辞退を迫られても書面にサインしないこと」

今後、新型コロナウイルスの影響で内定取り消しを受けた就活生は、どのように対処すれば良いのだろうか。佐々木弁護士は「納得がいかない場合は裁判を考えるものと思います」とした上で、その際に企業側に要求できるものとしては

「内定取り消しが無効であることを前提に、労働契約がまだ存続していることの確認と、その際に払われるべき賃金、またこれらとは別に慰謝料などの損害賠償請求ができることになります」

と説明する。その場合の慰謝料の金額については、ケースバイケースだが、過去に100万円の支払いを認めさせた例もあれば、30~50万円だった例もあるという。佐々木弁護士は

「慰謝料などの損害賠償請求だけだと、やや低額となる印象です。弁護士などの専門家と相談して、何を求めるかを決めるといいでしょう」

とアドバイスしている。

さらに、佐々木弁護士は「悪質な企業では内定辞退を迫ってくることもあります」と警鐘を鳴らす。内定辞退の強要は、内定者の自由な意思に反して辞退を迫る「強要」に当たり、違法になるという。場合によっては、慰謝料の対象にもなるといい、

「ここで大事なのは、内定辞退の書面にサインしないことです。書いてしまうと、後々争うのは難しくなりますのでご注意ください」

と強調している。

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