日本の高校進学率は97%を超えており、我が子に「中卒で働きたい」と言われたら、ほとんどの親が反対するだろう。お悩み解決掲示板に12月中旬、「中卒で動物関係の仕事に就きたいと言う娘」という相談が寄せられた。相談者は娘の父親で、
「高校出てからでも遅くはないと説得しても『私の人生だから』とシカトです。妻は賛成しています。俺は中卒で苦労したから言っているのになんで聞く耳持たないんだ!!」
と憤っている。「動物関係の仕事」といっても色々あるが、近くに競走馬の施設があり、「馬の世話は中卒でも正社員で雇ってくれるらしい」とのこと。確かに厩務員の求人は学歴不問で、多くは寮ありの正社員で募集している。しかし、親としては「いまどき高校ぐらい出ていないと」と気を揉むのは無理もない。(文:okei)
「高卒さえ仕事の幅が狭いのに」
中卒で苦労したという相談者だが、金銭的には困っておらず、進学資金は大学までなんとかなるとしている。皮肉だが、ある意味で親の背中を見ているとも言えるかもしれない。しかしスレッドで圧倒的に多いのは、やはり「高校か専門学校は出ておいたほうがいい」という意見だ。
「高卒さえ仕事の幅が狭いのに。今時中卒で就職なんて無謀です。高校は行くべきだし動物関係なら専門は出るべき」
「中卒での仕事内容、給与形態等もよく確認させた方が良いよ。好きだけで続けられるほど甘い世界じゃないし」
といった声が相次いだ。「やっぱりキツイし想像と違うから無理だわ、辞めるなんてなった時に、中卒じゃ次の就職に困るよね」という指摘も目立つ。
始めから「どうせ辞める」と想定するのも良くないが、動物相手の仕事は早朝からの体力勝負。確かに「好き」だけではやっていけないだろう。厩務員は学歴不問とはいっても、JRA(日本中央競馬会)の厩舎ではJRA競馬学校(厩務員課程)を卒業した人でないと働けない。それだけ専門知識や経験が必要ということだ。
また、「社会人から動物の仕事に転職した」という人は、同僚が動物看護師の資格や元トリマー、動物の専門学校や畜産高校を出ている人ばかりで、「特に馬の飼育は経験者優先」「羨ましくて仕方なかった」と綴っている。未経験で入れたとしても、何かと差を感じることになるだろう。回答の中には、乗馬部がある高校や畜産高校を勧める声が複数あった。
「娘の好きにさせてやれ」という声も
とりあえず進学するよう勧める人が多い中、「(進路を)真面目に考えている娘さんは偉いです」など、娘に理解を示す声も散見された。
「娘の好きにさせてやれ。自分で決めた道そんな中学生はそうはいない。応援してやれ!」
「何事にも積極的で希望を持ち、勤勉で周りの目に怖じけ付かないタイプなら、私は中卒で馬の仕事に就職も悪くないと思う」
確かに、専門分野を極めるために10代の早いうちから現場で自らを鍛え上げるという方法もある。受け入れてくれる職場があるなら、頭ごなしに否定するのも考えものだ。
また、「たぶん、中卒の苦労よりも高校に通わなきゃいけない苦労の方がお子さんにとって重いんだろうね」というコメントもあり、確かにその可能性もある。だとすれば厩務員でなくてもいいだろうが、相談者の娘がそういうタイプかどうかは分からない。
スレッドには、どんな道を選んでも苦労なしの人生なんてないのだから、子どもが選んだ道をできる限り応援しろという叱咤激励もあった。筆者の子どもも中学生で、進路に悩む時期なので他人事ではない。子どもが専門分野に興味を持っているなら、その知識をつけるために学費を出してあげたいと思うのが親心だ。相談者は頭ごなしに反対せず、そのことを娘さんに伝えてみてほしい。