――大人は「仕事がうまくいかなかったらどうしよう」「恋人にフラれたらどうしよう」など、まだ現実化していない不安や恐怖を抱えることも多いと思うのですが、それらとはどのように付き合っていけばいいのでしょうか。
「僕は子どもの頃『宇宙人にさらわれたらどうしよう』といつも不安になっていたのですが、大人が感じる不安や恐怖も結局はそれと一緒だと思うんです。一見リアルな不安や恐怖に思えるけど、実際にはまだ起こっていないという点は同じ」
「生きていれば何歳になってもそうした感情は生まれますし、『不安や恐怖は必ず感じるものだけど、薄れたり忘れたりするものでもある』と認識することが大切だと思います。そうすれば、不安になっても『時間が経てば消えていくだろう』『薄れるまで少し付き合ってみるか』と前向きに捉えることができるのではないでしょうか」
誰にでも訪れるミッドライフ・クライシスの乗り越え方
――大人は「加齢によるルックスや健康状態の衰え」にも不安や恐怖を覚えがちですよね。
「僕も40歳を超えてから白髪が増えたり、シワやシミが目立ってきたりして落ち込んだことがあります。それを先輩に相談した時に『ミッドライフ・クライシス(中年危機)は誰にでもあるし、絶対にその状態から抜け出せるから大丈夫』と言われて安心したことを覚えています」
「それから『どうせこれから下降していくんだから、今まで以上に毎日を大事に生きて体感時間を伸ばしていこう』と考えて、起床時に『今日という一日を大切に生きよう』、就寝時に『今日も穏やかに過ごせた』と意識する日課を作ってみたら、老化への不安が消えていきましたね」
「若い時は人生が永遠に続くように感じますが、中年以降は仕事のモチベーションにも変化が起きたりして、ある意味人生に飽きてきたような感覚にもなります。ただ、それに振り回されるよりも『仕事や遊びを楽しんで、毎日ご飯をおいしく食べて心地よく眠ること』を大事にしたいですね。生きるか死ぬか以外のことは大体どうにかなるものです」
――中には、仕事上の立場などを気にして、不安や恐怖を誰かに吐き出すことができない大人もいます。
「どんな立場になっても怖いものはなくなりません。それをうまく吐き出せず、不安や恐怖から目をそらしたり逃げたりすると、ひたすらそれにつきまとわれてしまうこともあります。
不安や恐怖と向き合うときは、あらかじめ終わりの時間を決めておくのがいいかもしれません。不安を感じる原因や状況についてじっくり考えるけど、時間切れになったら、結論が出なくても考えるのをきっぱりやめる。いくら考えても、答えが出ない問題もありますからね」
プロフィール:新井洋行
絵本作家。デザイナー。東京造形大学デザイン科卒業。2人の娘と遊ぶ中でヒントを得て作った、あけて・あけてえほんシリーズ『れいぞうこ』他(偕成社)で人気を博す。同シリーズは、海外でも出版され、国内外の子ども達にも愛されている。絵本の作品に、『れいぞうこ』『といれ』『はこ』(偕成社)、『いろいろ ばあ』(えほんの杜)、『おやすみなさい』(童心社)、『ちゅうちゅうたこかいな』(講談社)、『しろとくろ』(岩崎書店)、『いっせーの ばあ』(KADOKAWA)、『おばけとホットケーキ』(くもん出版)、『つんっ!』(ほるぷ出版)他多数。挿絵の仕事に、「モーキー・ジョー」シリーズ(フレーベル館)、 「パーシー・ジャクソン」シリーズ(ほるぷ出版)などがある。性格は、心配性であがり症。