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届け先は「競合他社」!? 配達したらスカウトされた話

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写真:飯配達夫

2020年の12月だったと思う。その注文はごく一般的なものにすぎなかった。しかし配達先に着いたとき、自分の目を疑った。そこは競合他社の事務所だったのだ。(文・飯配達夫)

まじか?

フードデリバリー業界は戦国時代である。新しい業態で成長が見込める。そこに疫病禍という追い風まで吹いてきた。鴨がネギ背負ってる状態と言える。それこそ雨後の竹の子のように次から次へと新規参入が相次いでいる。

しかしどの業者も配達員が足りない。新規参入組にとってなにより欲しいのは配達員だろう。利用客は割引キャンペーンで呼び込める。だが配達員の確保には難渋するはずだ。そこで一本釣り攻勢に出たのだろう。まさに仁義なき戦いである。

ここで付け加えておかなければならない。じつは Uber配達員の多くは同業他社の仕事も掛け持ちしている。僕自身3社登録している身だ。

なぜこういうことが可能なのかと言えば、フードデリバリーの配達員はアルバイトのような雇用形態で働いていないからだ。

俗に「ギグワーク」と呼ばれる通り、業務契約はあくまで1回毎。「クビ」に相当するのはアカウント停止であって解雇ではない。雇用関係にないから忠誠を誓う義理もない。だから掛け持ちできてしまうのだ。

このとき注文してきた会社も「Uberはそのままつづけてもらって大丈夫です」と言っていた。スカウトする側も、引き抜く訳ではないから罪の意識が軽いのだろう。

この帰属感の薄さ。これも配達員という働き方の一面である。

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