くじ引きで企業とマッチングする「焼肉採用」が盛況 京大生も「乱数はバカにできない」と参加
くじ引きや占いなど偶然性に身を任せて志望企業を決定する、というコンセプトで話題になった就活サービス「ベツルート」が、第4回目となる「焼肉採用」を7月2日に東京・渋谷で開催した。
焼肉採用は、企業の担当者が学生と一緒に焼肉を食べて親睦を深め、そこから両者の相性を探るというサービス。ガチャガチャと占いで席順が決まるため、運の要素も影響する。2月に行われた第1回では、経営者と意気投合した女子大生に、その場で内定が出るという一幕もあった。
企画者「人間社会の99.9%は偶然。神秘なんですよ」
冒頭、ベツルート編集長の若新雄純・慶応義塾大学特任助教が企画の趣旨を説明した。
「マイノリティ向けのサービスではありますが、人間の社会というのは計算されているのは0.1%ぐらいで、99.9%は偶然です。神秘なんですよ。僕らがたまたまこの時代にこの国に生まれたように、くじ引きで就職先を決めてもいいんじゃないか、ということで実験をやっています」
この日は、2016年卒の学生を中心に24人が参加。男女比はほぼ半々。今回はガチャガチャを使って3つのグループに分かれ、そこに企業の経営者や人事が1~2人入るというスタイルだ。
担当者は途中まで企業名を明かさないというルールなので、学生側も変に気負わずに気楽にコミュニケーションを取れる。第1回目もそうだったが、大学名を聞くと上位校がかなり多い。ベツルートを運営するアドヴァンテージ社(横浜市)によると、早稲田や上智などMARCH以上の学生が4割。今回は東工大や農工大、工学院大など理系の学生も多い。
学生はどのような意図で参加しているのか。新幹線でやって来た京都大学の男子学生は「運の要素が絡んでくるところが面白い。乱数はバカにできない」と語る。自分のやりたいことやできることは、意外と自分では分からないもの。思いがけない企業との出会いに期待しているという。
また、6月にICUを卒業したという男性は、「企業のトップと直接話せるサービスはあまりない。経営者の人柄が分かれば会社の雰囲気もわかる」と話していた。
企業も感心「みんな自分の人生をちゃんと考えている」
企業側は建築関係、人材など3社が参加。いずれも中小ベンチャー企業だ。eラーニング教材の開発をしている都内IT企業の人事担当者は、「普通の採用スタイルでは学生が就活モードになっているので素が見えない」と語る。
「お酒を飲ませればその人の本性を見ることができると思うのですが、自社で飲み会を主催するとなると色々と難しい。そこで、この企画に参加してみることにしました」
アルコールが入ったこともあり、学生も緊張せずに自分の考えを伝えてくれたという。「真面目な学生が多い。みんな自分の人生のことをちゃんと考えている。説明会にも来てくれれば」と語っていた
焼肉採用には、これまでに学生が延べ約120人が参加。今回も約70人から応募があり、抽選を行った。学生に支持される理由について、アドヴァンテージ社の担当者は「既存の就活に違和感を持っている学生がそれだけ多いということ」と説明する。
「既存の就活では、学生も企業も表面を取り繕ったお見合いのようになってしまい、お互いに今後やっていけるのかどうか見分けることができない。上位校の優秀な学生ほど、レールに乗るのではなく『これでいいのか』と考えています」
中小企業にメリット。「就活武装」してない学生と対話できる
くじ引きや占いを使ったマッチングは、企業側にもメリットがある。中小企業は知名度が低いので学生が応募してこないが、「偶然性を入れてマッチングをすれば、会社の規模は関係ありません」と語る。
学生も予期せぬ企業とマッチングするので、志望動機などの対策を練ることができない。「就活武装」をしていない素の学生と腹を割って話すことができるのも利点だ。今回含め、2月からこれまで計4回の焼肉採用を行い、中小ベンチャーを中心に7人に内定が出た。
今後もベツルートでは、1000人以上が登録しているウェブ版と並行して焼肉採用を実施していく。担当者は「既存の就活を否定する気はありませんが、引き続きサービスを拡大し、『リクルートのサービスもいいけどベツルートもいいな』と思ってもらえるようになれば」と話していた。
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