「当時の雇用形態は月労働時間が決まっている裁量労働制だったため、残業が続いた後、丸一日休む、という形を取ったところ、社長から呼び出され、こういうことは許されない!と言われました」
と女性は振り返る。労働時間が労働者の裁量にゆだねられているのが「裁量労働制」のため、突然「休みは許されない」と言われるのはおかしな話だろう。
「社長の言う雇用形態で契約はしていないため、『私の雇用契約書を見直していただけますか?そういう契約はしていないと思います』と回答。人事に確認したらしく、今度は人事から『それは社長が間違っているけれど、傷病での欠勤は解雇の理由になる』と言い始めました」
社長の間違いは認められたのに、今度は「解雇」を持ち出して圧力をかけてきた人事。どうやら、女性は遠回しに退職勧奨に遭っていたようだ。
「その年の初めに怪我をして参加するはずだったプロジェクトに参加できなかったことを理由にしたかったようです。しかし、当時のその会社の就業規則には傷病に関する規定はなく、辞めろと言われたわけでもないので、話を聞くだけで終わらせました」
と徹底して雇用契約や就業規則を盾に毅然とした態度を取り続けた女性。しかし……
「数か月後、上の上の上司から会社の経営が思わしくないので辞めてほしい、と言われ、パッケージをもらって辞めました」
と結果的には退職したという。パッケージとは、解雇される従業員に特別退職金やその他の優遇措置を雇用主が提案するものだ。女性は詳細を明かしていないが、おそらくしっかり交渉したことだろう。
最後に、「社長が謝罪しなかったのが、ちょっと悔しい出来事でした」と胸の内を綴っていた。