それは「縦長ロッカーの網棚の上の空間のみ」だった。
「ほかの従業員と共用で鍵はかけられないから、財布や携帯等の貴重品を入れるには抵抗があり、バッグや上着などをしまえない状況」
戸惑いながらも仕事を開始した女性。
「コンベアの上を流れてくる製茶された葉から虫等の異物を拾い上げるのが主な仕事だったけれど、50分経過すると、近くにいる副社長が『はい、お茶詰めて!』と、目を休める間、缶に茶葉を詰めるよう叫ぶ。せわしなくてどちらも中途半端になるし、空く時間がなくてトイレにも行けず」
確かに異物混入を防ぐための目視なら相当神経を使うだろう。トイレに行く時間が作れないのもつらいはずだ。困惑することは、これだけではなかった。
「イベントで使うエプロンほか、制服一式が入った大きな手提げを渡された。入れられるロッカーがないのに、大荷物。着替える場所もないから自宅で着て来いということ?口に入るものを扱うのに」
「嫌だと思って、翌朝一式をそのまま返して、辞めると伝えました。理由を聞かれたので、茶葉でかぶれたと嘘をついて辞めました」
女性は最終的に、退職を選んだ。食品を扱う仕事は、普通は出勤してから職場で着替えるものだ。ロッカーが共用で上のスペースしか使えず、服をかけられないのも不便すぎる。「我慢しつづけても、ストレスがたまるだけだったので、早いうちに辞めて正解だったと思います」と、きっぱりと回答していた。