それは全国でリユース事業を展開する会社で、社員が80人にパートが170人ほどだった。それなりの規模だったが、「社長の弟が総務部長で、総務部に正社員がゼロの会社でした」と男性は明かす。
「パートさんだけで総務を回し、肝心の総務部長が指揮を取ってくだされば良いのですが、理由を付けて現場に出掛けてしまうのです。現場は助かっている所はあるので責める事は出来ない部分がありますが、残された経理は大変です」
男性は昨年春に経理の実務責任者として入社した。この会社は総務が本社にあり、なぜか経理と人事はそれぞれ別の営業所に置かれていたという。そのため「総務が機能しないと、本社の請求書が経理に回らない」という有様だった。
「そんな中、総務のパートさんが請求書を抱えてしまってコロナに……という事態が発生しました。総務に届いた請求書は、経理にも見えるように共有サーバーにPDFで保管する約束でしたが、コロナにかかったパートさんが放置してしまい……。本来、穴が開いた仕事は総務部長が対応すべきだと思いますが、やはり現場に出掛けてしまい、支払いされずに時間が経過し、遂に先方から『支払が無い』と連絡が来ました」
本来は総務部長がしっかり管理してくれればいい話だが、この件で責任を追及されたのは男性だった。
「私に始末書を書くように指示をしたのが総務部長です。この会社は誰かが請求書を抱えていたとしても、察しない経理の責任という方針なのです。総務と経理が同じ社屋に居れば、まだ想定できたことですが……。私には理解出来ませんでした」
実は男性はその事が起こる以前に「請求書類の不備が起こりそう」と予測し、総務への出勤日を設けてほしいと打診をしていた。だが、総務部長からは「きっちり業務を指示しているから、〇〇さんは本社に来る必要性は無く全てZOOMで行って下さい」と断られていたという。納得できないのも無理はない。
5件分の始末書を書かされたことも
総務部長の尻ぬぐいで始末書を書かされたことはそれだけでなかった。毎月変動する給与の項目を、男性は他部署の部長ときちんと話し合って決めていた。ところが総務部長の独断でくつがえされた上に、本来つけるはずの手当てが支給できなかったこともあった。
「5人分、支給が漏れました。総務部長がリストを間違えていた為です。それなのに総務部長が私に、『一人につき、一枚の始末書を書くように』と指示してきました。仮に私がミスの原因だったとしても、このケースは一件のミスだと思うので、一枚で良いと思うのですが」
納得はいかなかったが、その他にも色々あって我慢の限界だった男性は見切りをつけた。入社から1年も経たないうちに転職を決め、今年1月末で離職したという。
「当然、証拠は揃えているんですよね? 受けて立ちますから、どうぞ」
そして転職先が決まり、最終出勤日。人事に退職書類の確認をしていた時、冒頭の会話が展開された。相手は、
「転職先が決まって良かったですね、〇〇さん。〇〇さんを社内でパワハラとセクハラで訴える話が出ていたんですが、総務部長が元部下を酷い目に合わせたくないと止めていましたよ。お礼を伝えては?」
と恩着せがましく言ってきたという。実は人事もミスが多く、保身のため総務部長の肩を持っていたようだ。男性はこう応じた。
「訴えて良いですよ。 当然、証拠は揃えているんですよね? 受けて立ちますから、どうぞ。 私も過去に受けた仕打ちは録音しておいたので、そちらがその気なら、受けて立ちます」
男性も、何かあったときのためパワハラ発言を録音したり、LINEメッセージを保存したりと「労基に訴える準備はしていました」と明かす。その反論が功を奏したのかは不明だが、男性は訴えられることもなく、現在は前職よりもぐっと離職率の低い会社で働いているそうだ。
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