そもそも、その仕事は競争入札案件で、「それまでほとんど付き合いのないユーザー」だった。しかも、
「システムの仕様書に詳細なことがほとんど書かれていませんでした」
と見積を立てる側からすると不安な案件でもあった。
「そのため、リスクを見込んで通常よりかなり高めの金額で見積を提出していました。ミーティングのメンバーは相手側が2人、こちらが営業マン1人と、私を含めたエンジニア3人でした」
客のうち1人は「アドバイザーとして同席した情報システム部門の担当者」で、前回「話にならない」とあしらってきた人物だ。男性たちが、作成し直した資料で2度目の説明を行うと……、
「ありえないほど大きな声で、『なんだこの資料は!』と激高され、『お前か!責任者は!』と、私を指さしながら詰め寄ってくるような状況となってしまいました」
男性はこれを「叱責、いや、罵倒でした」と振り返る。
「リース契約であったためでしょうが、『リース会社へ言いつけて、契約不履行にするぞ』みたいな感じでも言われてしまい、営業マンは立ち上がって『大変に申し訳ございません』と謝罪していました」
その場はかなり緊迫した状態となってしまった。2回目の打ち合わせで「爆発されてしまった」と言う男性は、実は他の仕事でも苦しい状況にあった。
「それまでも他の案件でいろいろと問題の対応をしていて、心身ともにギリギリの状態でなんとかやってきていました。後から考えると、その言葉で緊張の糸が切れてしまい、数日後に会社へ休養を申し出ることとなりました」
ここで詰められたことが決定打となり、男性は一時期仕事ができなくなってしまったのだ。
「そこまで言われる筋合いはなかったと思います」
その仕事は他の社員が引継ぎ、なんとかなったようだ。男性は半年ほどの休養期間を経て、別の部署で復帰を果たした。顧客の業種は異なるが、以前と同じインフラエンジニアとして働いているそうだ。
男性は当時をこう振り返っている。
「今思えば、提出した資料、基本設計書はチープであり、とても設計書と呼べる代物では無かったとは思います……なので、それらの点を指摘されても当然だとも思えますが、有り得ないほどの大きな声で、叱責、いや、罵倒してくるのはどうかと思いました」
「今でもたまに、その情報システムの担当者の顔までは思い出せませんが、ここまでひどい言い方をされたことは後にも先にもなかったなぁ、そもそも仕様書には詳細な情報が書いていないに等しかったし、そこまで言われる筋合いはなかったと思います」
「いかにベンダー相手とは言え、いわゆるビジネスの場で、あんな恫喝まがいの口調はいかがなものかなぁ……などと、今となっては思ったりします。あんな人間にはなりたくないし、二度と会いたくないですね。 実際に二度と会うことのない人生ですので、よかったと思っております」
男性は、「罵倒されたときの音声、もしくは映像でもあれば、パワハラ相談室みたいなところへ送りつけるとか、いっそのことSNSへアップするとか何かしらのことが出来たかも……」と考えることもあるというが、「今となっては済んだ話なので、やらなくてよかったと思います」と落ち着いて現在の心境を語った。
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