ニュースで企業の不祥事を目にする機会が増えているように、昨今はコンプライアンスへの注目度が高い。もしも法令違反が常態化しているような会社に入社してしまったら、ひとごとではいられないだろう。
東京都の40代後半の男性(建築・土木技術職/年収600万円)は、以前に働いていた公共施設向けの家具の製造販売会社での出来事を振り返った。まず、男性は施工管理職として入社したのに、なぜか作業員としての働きを求められたそうだ。
「施工管理職としての動きをしたところ、『あいつは動かない、使えない』というレッテルを貼られてしまったところから、この会社はヤバいと気付きました」
施工管理職は現場全体の管理が仕事であり、作業自体は行わない。社内で施工管理職と作業員の区別がついていないとしたら、あらゆる部分で支障が出そうだ。案の定、男性はその会社の“ヤバいところ”を次々に指摘し始めた。(文:福岡ちはや)
取締役に直訴したら、その取締役は翌日からうつ病で休職
男性いわく、その会社には「分業制」という名目で、各社員にごく一部の単純作業のみしか担当させない仕組みがあったという。男性はこうした仕組みを
「他社に転職できるようなスキルを身に付けさせずに、社員を飼い殺しにするための手段でしかなかった。その状況のまま年を重ねてしまい、転職もままならない年齢になり、後悔している者も少なからずいた」
と批判する。
また、その会社では法律違反が常習化していた。例えば、電子データでやりとりする契約書に貼る印紙は、カラーコピーしたものを使い回していたそうだ。言うまでもなく、これは悪質な脱税行為である。男性は社内で問題を指摘してまわったが、状況が改善することはなかった。
「担当者は『上からの指示で昔から行っていた』と言う。『脱税にあたるのでは?』と上司に言うも、『自分は知らない。関係ない』と言い放ち、たまたま業務上で繋がりのあった取締役に直訴したところ、その取締役は翌日からうつ病で休職。事業部の取締役本部長は『法律を守っていたら会社が潰れる』と言い切った」
その会社は法律を知らない人ばかりなのか、労働基準法や労働安全衛生法も誰も守ろうとしなかったため、男性は、
「『このままでは大きな労働災害があった際にスケープゴートにされる』と本気で怖くなり、1年半で退職に至った」
と明かした。法律すら守らない会社で働くのは、いろいろな意味でリスクが大きすぎる。男性は賢明な判断を下したと言っていいだろう。
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