女性いわく、その施設はギリギリの人数で業務を回しており、人手不足が慢性化していた。足りない労力は外国人を雇って補っていたが、研修や教育をする余裕がないばかりか、カタコトの日本語しか話せない彼らに「iPadで記録入力をしろ」と無茶を言う始末。そのため退職を申し出る外国人もなかにはいたが、経営者側はそれをすぐには承諾しなかったという。女性は、
「コロナ危機真っ盛りで『緊急事態宣言で国に帰れなくなったら困るから、来月帰らせて。おばあさんがもう長くないんです』と訴えてきた方もいましたが、経営者側は『本当かしら。辞めたあとはもっと時給の良いところに行く気じゃないかしらね』と言い放ち、『年度末まではいて』と言い張るのです。『こいつら正気か?』と思いました」
と憤った。
ちなみに、女性も入職から1か月で退職を決めたが、なかなか辞めさせてもらえなかったそうだ。ところが「労働基準」という言葉を出した途端に「明日から来なくていい」と言われてしまい、月末まで勤務するつもりでいた女性は「少し困りました」と当時を振り返る。
「でも、すぐに転職先は見つかりました。その施設を経営している法人のライバル的な医療法人で面接を受け、その法人施設の実態を説明し、『心が死にそうだった』と話したら即採用になりました。こちらはホワイトな職場で、今はその法人施設の1つを任されています」
結果的には、月末を待たず退職になって良かったのかもしれない。
サビ残は当たり前、夜勤手当も渋る
めちゃくちゃな経営に振り回されたのは、外国人や相談員ばかりではない。その施設は介護士や看護師にとってもブラックな職場だった。日勤では本来の時間より30分から1時間も早い出勤が求められ、朝の食事介助やオムツ交換をするのが慣例になっていたからだ。
「夕方は5時半上がりでも『夕食の食事介助をしてから帰ってね』と言われ、残らされます。その分の残業はつきません。タイムカード処理をしてから業務にあたります。サービス残業が朝と夕方で2時間半あります。トラブルがあれば、さらに残ります。無給です。フロアリーダーになると、さらに持ち帰り業務があります。シフトを組む作業も持ち帰りです。くどいようですが無給です」
それどころか、経営者側は夜勤手当さえも出し渋った。フロアリーダーの見立てでは、夜勤を1人で回すには少なくとも3、4回の研修が必要だったのに、経営者側は「夜勤手当もただではないから、1回の研修で夜1人でフロアを回せるようにしろ」と言ったそうだ。
恐ろしいことに、女性は「その施設はいまだにあります。そして良くない噂を聞きます」と語る。福祉施設は在宅介護が限界の人が利用するため、ブラックでもなくならないそうだ。女性は、
「つぶれてくれればいいのにとすら思いますが、(施設が)なくなって困るのは入所者さんとその家族です」「悲しいことです」
とやるせない思いを吐露していた。
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