働くお母さんにも、家族とともに「自分自身の夢」を叶えて欲しい――「しゅふJOB」を運営するビースタイル・三原邦彦社長インタビュー | キャリコネニュース - Page 2
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働くお母さんにも、家族とともに「自分自身の夢」を叶えて欲しい――「しゅふJOB」を運営するビースタイル・三原邦彦社長インタビュー

――ビースタイルを創業した2000年代初頭、人材業界では主婦を対象にした派遣事業は難しいと言われていたそうですが、どういう経緯で主婦に着目したのでしょうか。

前職のインテリジェンスで派遣事業に携わっていたときから、人材サービスの将来について考えていました。当時からはっきり分かっていたことは、日本の労働人口が今後減っていくということ。そして代替労働力として主婦やシニア、外国人の活用を進めなければいけないと感じていました。

2002年、ちょうど起業しようと思ったときに、こんなこともありました。派遣スタッフで働いていた優秀な女性がいたのですが、結婚して子どもができたので辞めてしまった。それで、その後どうしているのか尋ねてみたら、スーパーでレジ打ちをしているって言うんです。TOEIC900点ぐらいあるのに、ですよ。

当時はホワイトカラーで、家事と育児を両立しながら働ける職場がありませんでした。流通や販売でパートをするくらいしかなくて、今までの経験を活かしながら働くことが難しい時代だった。結婚して出産するのはみんな当たり前にやっていることなのに、それで人生の選択肢を狭められるのはおかしいと思いました。

独立するとき、周囲からは主婦ではなく、前職で実績があったエンジニアの派遣をやった方がいい、と言われました。でも、この課題を自分自身で解決しなければ誰が解決するんだという、ある種の社会的使命感があったんです。会社員時代は、いかにして売上を最大化するかしか考えないスーパーエコノミックアニマルだった。でも、起業するときは、お金だけではなく社会に対して新しい価値を提供したいなと思いました。

「週5日フルタイム」ではない人材ニーズは発掘できる

創業時は上場企業の社長に手紙を書いてアポをとっていたという。

創業時は上場企業の社長に手紙を書いてアポをとっていたという。

――そもそも、なぜ主婦は働き続けるのが難しいと言われるのでしょうか。

結婚や出産をするとライフスタイルが変化するけど、企業側はマネージメントにしてもワークスタイルにしても、その変化についていけない。そのため、結局外すしかなくなるというのが一番大きいです。徐々にライフスタイルに合わせて働ける時代になってはきましたけど、それもここ最近ですね。

企業の方も、週5日フルタイム勤務を前提とした人事制度をとっています。労働時間が経済効果に比例していた高度経済成長期の名残ですね。でも、これからは付加価値のある仕事をしないと経済効果は生まれないし、給料も上がりません。企業もそれを意識して人材を活用する必要があります。

――企業に新サービスを説明するに当たり、特に重視していたポイントはありますか。

企業には単に「主婦を使って下さい」と言っても無理で、きちんと経済効果があることをしっかり訴求しなくてはいけません。主婦には103万円という扶養枠内で働きたいという人も多いので、社会保険料の負担や時給を抑えることができます。そして、企業の業務にも繁閑期があるので、それに合わせて人材を使えばコストカットができると説明しました。

例えば、給与計算の仕事は月初しかないのに、そのためにフルタイムで人が張り付いているのは無駄ですよね。注文受け付け業務は午前だけで、午後には仕事がない受注センターなんて職場もありました。

企業には「社会人経験が10年あるオフィスワーカーが働きますので、まず月60時間入ってもらって、どうしても残業できる人が必要ならばフルタイムで採用してください」と言うんです。そうやってポジションによって使い分けすると、企業によっては人件費を30%以上抑えることができます。それを上場企業のトップに説明したら、意外と納得してくれました。

働く女性からは「自分の都合に合わせて働けるのが嬉しい」との声も

――主婦のみなさんは、実際どのような形で働いているのでしょうか。

ビースタイルのサービスの中に、平均時給1900円以上の「時短エグゼ」というものがあります。時給は高いですが、それ以上に高い経済効果が出ていると企業からも好評です。働いているのは、主婦になる前に年収500万円以上だった女性たちで、元々大手企業で働いていた人も少なくありません。中にはMBA(経営学修士号)取得者や管理職経験者もいます。

職種としては多いのがマーケティングで、あとは広報、人事、経理、営業です。ある企業が初めて新卒採用を行うことになり、そこで人事経験者の主婦が派遣され週2~3日働くなんてこともあります。これまでコンサルに頼ってきたことを、主婦が担っているケースも多い。

働いている女性からは「自分の都合に合わせて働けるのが嬉しい」という声をよく聞きます。他の人材会社だと、「子どもの塾の日なので迎えに行かないといけない」というと、なかなか仕事に就けませんが、「しゅふJOB」や「時短エグゼ」はそれを前提でやっています。そのため仕事を始めると長く続けてくれる人が多いです。

日々の家事は大変な仕事なのに評価されにくく、それこそ子どもからは「ご飯まだー」なんて言われて(笑)、やって当たり前だと思われがちです。でもそんなお母さんも、外で働けばきちんと評価されるわけですから、それが嬉しいみたいです。

――最近では、新サービス「これからの転職。」(運営:株式会社Shift)を立ち上げ、女性が働き続けられる企業を紹介する「ホワイトアロー企業100選」という取り組みも始めましたね。

結婚や出産をしてもキャリアの継続と発展ができる会社の正社員求人を紹介するのが「ホワイトアロー企業」の趣旨です。「残業を非推奨としている」「時間ではなく成果で評価される」「業績が良く成長している」など6つの基準をもとに、100の企業を選定しました。サイボウズさんやカルビーさんといった有名企業も入っています。

キャリアの別れ道は27歳。10年後、20年後を見据えて決める

「仕事は自己表現の一つ」と語る

「仕事は自己表現の一つ」と語る

――女性はまだ結婚後のキャリア形成が難しいといわれますが、それでも最近は東京を中心に、いわゆる「寿退社」をあまり見なくなった気がします。

そうですね。出産で辞める人はいても、結婚で辞める人は大分減りました。今までの女性は結婚して退社することを前提に、せいぜい3年後、5年後を見て企業を選べばよかったのですが、辞めないということであれば、10年後、20年後見据えた転職をしなくてはいけません。

一方で転職市場では、求職者が一番売れやすいのは「27歳のとき」と言われています。そうなると、27歳というのは女性にとって、結婚と出産の前に「今の会社に留まるのか、それとも転職するのか」を決めなくてはいけない大切な時期になります。

最近、働く女性を対象に、自身のキャリアを考えるための「ライフキャリア戦略セミナー」も開催しています。正社員で働き続けるのと、一回ブランクができてパートで働き続けるのでは、生涯年収が2億4000万ぐらい違う。女性が自分自身の人生を考えるときに、そういうことをライフキャリア戦略論として考えなければいけない時期に来ていると思います。

他にも、子どもができたときに、子育てと両立しながら限られた時間でどうやって成果を出すか、ということも大事です。職場では周囲の理解を得ることも必要ですし、家庭でもベビーシッター、保育園、夫や親といった外部リソースをマネージメントしながら回していかなければいけない。

女性がキャリアを継続し発展していくためには、周囲とWin-Winで交渉し目標を達成することが不可欠です。女性の管理職を増やしていくには、それを意識することが重要だと思います。

家族は「みんなが夢をかなえるためのチーム」であるはず

――最後に、働く女性に対してメッセージをお願いします。

今の時代は家族の形も変わっています。昔は、お母さんは子どもと夫の夢を応援するしかなく、「夢の奴隷」と言われることもあった。ですが、今はお母さんも夢もある。家族は、それぞれが効率的に夢をかなえるためのチームなんです。

そうしたときに、積極的に自分の人生をどうしていくのかを考え、仕事の中でもチャレンジして欲しい。仕事は単にお金を稼ぐための手段ではなく、自分を構成する大きな要素の一つです。諦めるのではなく、もっと仕事を通じた自己表現をして欲しいと思います。

日本人の寿命もまだ伸びています。以前は50歳というと「もう50歳」だったけど、今は「まだ50歳」。年をとっても元気な人が増えた。もしかしたら我々が老人になったときには平均寿命が100歳近くになって、70歳を過ぎても働くことが当たり前になるかも知れない。そういうスタンスで、ブランクがある人でも是非働き続けて欲しい。夢を追うことは、まだまだできます。

ビースタイル本社エントランスにて

ビースタイル本社エントランスにて

【三原邦彦氏 プロフィール】
1970年生まれ。インテリジェンスを経て、2002年に人材ベンチャー、ビースタイル(東京・新宿)を設立し、代表取締役就任。同社は2014年と2015年に調査機関、Great Place to Workによる「働きがいのある会社」ランキングに入選している。NHK「あさイチ」やテレビ東京「カンブリア宮殿」などメディア出演多数。

あわせてよみたい:女性の転職は「25歳から29歳」がねらいどき?

 

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