雇用の安定図る「労働移動支援助成金」が、逆にリストラを促進! 厚労省は「支給の厳格化」の方針示す | キャリコネニュース - Page 2
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雇用の安定図る「労働移動支援助成金」が、逆にリストラを促進! 厚労省は「支給の厳格化」の方針示す

ワーナーミュージック・ジャパンの社員Aさんは、会社から事実上の退職勧奨を受けている。去年7月、所属する部署がなくなることを理由に、会社から転職支援制度への応募を勧められた。

これに応じなかったAさんに、会社側が勧めてきたのが「出向」だ。ところがそれは、現在の職種とあまりにかけ離れた提案だったとAさんは明かす。

「出向先は清掃会社かもしれず、給与が20~30%減るとか恫喝的なことを言われた」

Aさんは会社に残ることを決めたが、その後8回も面談が行われている。その中で、人材会社の「テンプスタッフキャリアコンサルティング」の名前がある書類を渡された。驚くことに、そこには「ご退職(予定)日」の記入欄があった。退社の意思がないAさんが反発すると、数日後、今度は「個人情報開示承諾書」なる書類を渡された。

人事部の指示かと思ったが、よく見ると文中に「再就職支援申込書」と書かれている。よく読まないでサインしていれば、再就職支援が自動的に申し込まれてしまうところだった。Aさんが指摘すると、会社は「テンプスタッフが間違って作成した」と釈明。Aさんは会社とあくまでも戦い続ける姿勢だ。

人材会社が「非戦力社員チェックリスト」のノウハウ提供

ワーナーミュージック・ジャパンは、番組の取材に対し「早期退職はテンプスタッフの提案を受けて実施したのではない」と回答。Aさんと8回も面談した件については「退職拒否が未確定な段階での面談と理解していて、違法な面談ではない。今回の件に関して労働移動助成金の受給・申請はしていない」と疑惑を否定した。

その一方で、「雇用の安定」を図るはずの助成金制度が、逆に「リストラ」を促進しているという見方もある。労働問題に詳しい新村響子弁護士は、助成制度の乱用を指摘。大手を含めてすべてが違法例どうかは分からないと断ったうえで、こう証言する。

「リストラや希望退職者募集が行われる場合、人材支援会社が関係していないことは少ない」

企業は「労働移動支援助成金」を使って再就職支援を人材会社に委託するが、人材会社は再就職支援だけでなく、リストラのアドバイスまでして人員削減を促しているというのだ。

番組は、人材会社から企業へ向けた提案資料を入手。表紙には「人員適正化施策実地のご提案」とあり、目次には「公的助成金受給指導」の項目もある。「非戦力社員チェックリスト」では、リストラする社員をリストアップするノウハウまで説明していた。中にはこんな項目が連なる。

「過去3年から5年の人事・勤務評価が低い」
「今後のポジションを用意できる可能性が低い(バブル入社社員など)」

「ローパー社員」の退職は別の手続きを取るべき

巻末には顧客企業がリストアップした人数のうち、どれだけ退職に同意したかの人数がまとめられていた。「大手化学企業、リストアップ50名、退職同意44名」「大手IT企業50名、同意43名」など、高い退職同意率が誇らしげに並んでいる。

厚労省はこの4月から助成金の支給条件を厳しくしていく考えを示しているが、新村弁護士は「具体的にどこで何が行われているかは極秘なので外部に出にくい」として、支給要件を厳格化しても問題を解決することは難しいという。

コメンテーターの熊谷亮丸氏(経済分析室長チーフエコノミスト)は「制度の趣旨をはき違えている言語道断な悪用」と厳しく批判した。会社としては、40代以上のいわゆる「ローパー社員(ローパフォーマー)」を退職させたい思いがあるのだろうが、もしそうだとしても助成金とは別の手続きを取るべきだろう。(ライター:okei)

あわせてよみたい:「働かないオジサン」が原因と分かっているけど…

 

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