職場のヘッドホンは「仕事の集中力アップ」に効果的なのか? 「コードを書くときだけ」つけるエンジニアも
仕事の連絡手段が電話からメールに移り、パソコンを使う作業が増えたことで、仕事中にヘッドホンをしている人が珍しくなくなってきました。米タイムマネジメント・ニンジャは、職場のヘッドホンには5つの効能があるとしています。
1.これから集中して作業をするのだという自覚が生まれる
2.自分の作業ゾーンを作り出せる
3.音楽を使ってモチベーションを高められる
4.外界からの邪魔を防ぐ
5.多忙さの中で、心を落ち着かせられる
「同僚の憤りを招く」と問題になったことも
その一方で、米ウォール・ストリート・ジャーナルにはスー・シェレンバーガー氏が「仕事中のヘッドホンは本当に役に立っているの?」と疑う記事を寄稿しています。
欧米のオフィスは個室やパーティションで、個人の作業スペースが区切られているところが少なくありません。しかし中には一般的な日本企業のように、大部屋の「オープンスペース」で仕事をしている人もいます。
そういう場所で仕事をする場合には、上記の効能は確かにあるのかもしれません。ヘッドホンはオフィスの雑音の4分の3ほどを遮断できると言われています。周囲の雑音を遮断できる「ノイズキャンセリング機能」がついたヘッドホンも人気ですし、それによって仕事への集中力が高まるという人もいるはずです。
しかしチームワークをするには、弊害もあるようです。120名の同僚に囲まれたオープンオフィスで働くメリッサ・ユウさんは、「同僚と話そうにも返事をしてくれない」といいます。彼女は「内線電話をかけても出てくれないし」と嘆いています。
このオフィスで働く人の4分の3は、勤務中にイヤフォンで音楽を聴いたり雑音除去ヘッドホンを使ったりしているからです。これは米国全体に広まりつつある傾向ですが、2010年に1400人の最高情報責任者に行った調査では、ヘッドホンの使用が同僚間の憤りを招くとして、主要なオフィスエチケット問題として取り上げられたこともあります。
歌入りの曲では「作業への集中度が落ちる」おそれ
仕事中にヘッドホンで音楽を聞くことは、必ずしも望ましいことばかりではないという意見もあります。最近の脳の研究によると、音楽が仕事の邪魔になることがあるという結果も出ているそうです。
台湾の学生102人を対象にした調査では、歌の入った音楽では作業への集中度が落ちることが確認できたそうです。成人133人を対象とした別の調査では、ヒップホップを聞きながらだと読書への集中度が明らかに落ちることが分かっています。
台湾の学生89人への調査では、流された曲に対して特に強い感情を抱かない人と比較して、その曲が好き、あるいは嫌いな場合には、作業への集中度がかなり落ちることが分かりました。いくら好きな音楽でも、それに気を取られてしまっては意味がありません。
米Name.com社のソフトウェアエンジニア、パトリック・ラムゼイさんは、コードを書いているときだけ音楽を聞いているそうです。反復的なビートが論理的で段階的なプログラミングのプロセスにピッタリするのだそうですが、メールを書く時には、音楽はかえって邪魔になるそうです。
Lifehacker.comのライター、アラン・ヘンリーさんは、騒音の絶えない職場で1日の7割を、ヘッドホンを着けて作業をしています。同僚が近づいて来たとき、ヘンリーさんが片耳をヘッドホンから外したら、それは「話をする時間がない」という合図。ヘッドホンを外したら「時間があって話し合える」という合図にしているそうです。(文:夢野響子)
(参照)At Work, Do Headphones Really Help? (WSJ)
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