続けて、「企業がほしいのは極論を言うと、若くて安い労働者なんです」とも指摘する。様々な経験を積んできた40代を雇用することは、企業にとって大きなメリットをもたらす可能があるが、人をコストとして見る企業が多いため、低賃金で雇える若者ばかりが採用されがちだという。
「人材重視の経営が結果的に企業の収益を生み出す最良の選択であるっていうのは、日本に限らず欧米での全ての研究が辿り着く先です。ところが、日本ではコスト重視・企業重視が行われている」
日本の経済界は、目先の利益ばかりを追求する短期的な視点でしか物事を見られなくなっており、人材を育てることやスキルのある人材を採用することが蔑ろにされているようだ。
経団連の中西宏明会長は先日、終身雇用は制度疲弊を起こしていると発言していた。これについて河合氏は「長期雇用というのは制度ではなく、人間の可能性を信じる経営哲学だと思うんですよ」と主張する。
「日本だけが長期雇用しているイメージがメディアから発せられる場合が多いですけど、ヨーロッパでもアメリカでも基本は長期雇用です。『生涯に何社務めるか?』という調査をやると、日本とヨーロッパではほとんど違いがない」
終身雇用は日本に限った制度ではなく、「日本企業は長期雇用で得られる利点を引き出す経営ができていない」と指摘した。
定年までやり過ごそうとする「働かないおじさん」の増加も問題
ただ、「現場を見ていると全て経営者の責任にはできなくて、”働かないおじさん問題”というのがあるんですよ」とも言う。河合氏は、給与に見合ったパフォーマンスを出していなくても、定年までなんとか会社にしがみつこうとする中堅社員が増えていると感じるという。そのため、40代以降の求職者を断ったり終身雇用を廃止したりする流れが起きてしまうのもやむを得ないと話す。
「会社員になることが目的になったことを”会社員の病”って呼んでるんですけど、そうなってしまうと企業の負担にしかならないし、若者が活躍できない。なにより、自分の人生を台無しにすることになるんですよ。そういう人には自分の価値判断が求められる時代がきた」
会社の言うことに従うだけではなく、自分にとって何が幸せか自分で判断することが必要になる、という見方を示していた。