道路交通法第66条第1項では
「何人も、(略)、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」
と過労運転を定義している。また、免許取り消しの行政処分に加え、「3年以下の懲役、または50万以下の罰金」という比較的重い罰則も設定されている。
交通事故慰謝料協会によると、”過労”を認定する基準の1つに厚生労働省が公開している「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」がある。同基準では、トラック、バス、タクシーの事業種別に異なる基準を設けており、例えば、トラック運転手の場合は「1か月の拘束時間は293時間が限度」としている。
さらに、「1日の拘束時間は13時間以内(残業する場合は16時間以内まで)」「2日間平均の運転時間は9時間以内」「4時間以上の連続運転も禁止」などの基準が細かく示されており、同会のサイトでは
「この条件に1つでも違反していると過労運転と見なされます。例え健康状態が良好であっても、上記の条件から外れていれば過労運転の認定になる場合もあります。特に交通事故を起こしてしまったら運転時間などを調べられ、違反を指摘される可能性が高いでしょう」
と警鐘を鳴らしている。
「居眠り運転」のほうが罰則軽いことに疑問の声も
そこまで過酷な勤務環境ではなくても、疲労からうっかり居眠りをしてしまうこともあるだろう。居眠りと過労運転は区別されており、居眠りは「安全運転義務違反」に当たる。つい混同しがちだが、違反点数は2点で、反則金(普通車9000円、大型車1万2000円)を支払えば、懲役刑などの罰則は免除されるなど、罪の重さは過労運転の場合と大きく異なる。
過労運転の主なケースでは、2016年に広島県の「八本松トンネル」で、渋滞中の車列にトラックが追突し、火災が発生する多重事故があった。この事故では死者2人を含む多くの負傷者が出ている。原因となったトラック運転手は、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)、道路交通法違反(過労運転の禁止)の罪に問われ、既に懲役4年が言い渡されている。
事故を起こさなくても逮捕されるケースもある。兵庫県では2015年、運送会社の社長が逮捕された。容疑は、自社の従業員が過労と分かっていながら、自社の利益のために運転させたため。高速道路の路側帯で仮眠中だったトラック運転手を職務質問したことから発覚したという。これら以外の事例でも、トラック運転手が摘発されるケースが目立つ。
報道を受けて、ツイッター上では
「『過労運転』したくてしてるわけじゃないと思うんだけど。そうさせてる会社が問題」
などと不安や戸惑いを感じる人や、「より悪質な酒酔い運転やあおり運転より軽度の罰則にすべきだ」といった意見を挙げる人もいた。