企業側が”自覚して”嘘をついているケースは、何の疑いもなくブラック企業です。ややこしいのは”無自覚”で嘘をついているケース。これが数多くの「ブラック企業」を生み出しています。
企業は優秀な社員を獲得するため、新卒・中途問わず採用活動を通して自社のアピールを行います。その中で、企業側にあるマイナスの側面は表には出さず、プラスの側面をよりプラスに魅せようとします。これが「誇張」や「矮小」であるうちははまだいいのですが、就活生や転職者の受け取り方次第で「嘘」になってしまうことがあります。
ある大手メーカーの営業から「ウチの会社は残業代が出ないブラック企業なので生活もきつく、もう転職したい」という相談を受けたことがあります。上場企業で大手なのに残業代が出ないという点を不思議に思い、企業の募集要項などを確認しました。
すると、営業などの外回りをする仕事外で働いている時間を”一定時間”としてみなして計算する「事業場外のみなし労働時間制」、元々の固定給に残業代が45時間分含まれている「固定(みなし)残業45時間込みの給与」の文字がありました。
この掛け合わせによって相談者は「残業代が出ない!」となっていました。「残業代についてちゃんと入社前に質問しましたか?」と聞いたところ、「大手メーカーだったので、流石に残業代が出ない、なんてことはないと思って質問はしなかった」とのことでした。
おそらく、残業代について質問をしていれば固定残業制度については答えてくれていたとのではないでしょうか。「大手なので大丈夫」とこの質問をしなかったことが今回の問題を引き起こしていたのでした。
「厳しい」環境といっても定義は様々
もう一件、ある大手IT企業に就職した人からの相談を受けました。いま働いている会社がブラック企業だと言うのですが、元々説明会や社員から「厳しい職場のため、退職率も高いし、目標に対しても厳しい」とは聞いており、わかった上で入社を決めたとのこと。だからこそ成長出来る環境だ、という趣旨の説明をされていたようです。
しかし実際入社してみると、自分が思っていたほど仕事の難易度が高くはなく、それ自体は非常に単純作業で簡単なものだったといいます。一方、職場環境としては上下関係が厳しく、上司が言うことであればどんなに間違ったことでも従わないといけないとのこと。
さらに会社の指標目標達成に対しても非常に厳しく、クライアントにとって全く適していない商品でも提案して売らなければいけないようです。企業と相談者で「厳しさ」の意味が違っていたため、今回の問題を引き起こし「ブラックな職場」と呼ばれるに至りました。
ネットを使って調べることもできる しっかりと対策を
前述の「残業代」と、この「厳しさ」の食い違い。恐らく2つの事例とも企業側に悪意はなく、受け取り手との間に齟齬が生じたためだと思います。それでは、このような事態はどうすれば防げるのでしょうか。
実際問題として企業側が表現を改めることはほぼ無いでしょう。そのため就活生や中途転職者ら受け手側が注意する必要があります。ただ、全ての表現に嘘が混じっていないかを確かめることは不可能でしょう。
そんな中で必要なことは「自分が働く上で、大切な要素に関してはとことん確認する」ということです。上記事例で言えば、1つ目は「残業時間や残業代」、つまり働く時間や給与の要素をとことん調べて質問をしていれば今回の事態は防げたでしょう。
2つ目は相談者が働く上で大事にしていた要素は「厳しい環境」ではなく、「風土」「顧客への姿勢」でした。入社前に「上司や同僚との関係性」や「どのような商品を、どのくらいの価格で、どのようにお客様に提案するのか」などを詳しく聞いていれば、そもそも入社をしていなかったでしょう。
インターネットが発達した昨今、企業側を調べたり内部社員にコンタクトを取ったりする方法はいくらでもあります。「自分が働くうえで、大切な要素」をしっかりと把握し、調べることはそこまで難しいものではありません。「ブラック企業だった!」と思わないための対策をしっかりと行って、自分に本当にあった企業に入社してくださいね。