新卒入社3日目で退職した男性に「なぜ辞めた?」かを教えてもらった | キャリコネニュース
おかげさまで9周年 メルマガ読者数
65万人以上!

新卒入社3日目で退職した男性に「なぜ辞めた?」かを教えてもらった

画像はイメージ

「新人がすぐ辞めてしまう」という話をよく聞く。あちこちで人材不足・採用難がささやかれる昨今、せっかく採用した人材にやめられると大変だ。新人が辞める理由を理解するためには、実際に辞めた人に話を聞くのが早い。今回は、去年「入社3日で辞めた」という20代男性に、早期退職した経緯を詳しく教えてもらった。(文:広中務)

就職活動に失敗し、納得のいかない就職先に

この男性は昨年、東京都内の私大を卒業し、新卒採用で都内にある老舗物流系企業に就職した。そこを2日で辞めたわけだ。ただ、「新卒採用」は企業側だけではなく、応募側もけっこうな力を注ぐもの。そんなに簡単に諦められるものなのだろうか?

男性は語る。

「そんなに、就活に努力をしたつもりはないんです。コロナとかもあり、なんだか世の中の流れに乗って漂うような感じでした。気がついたら、みんな就職活動をしていて……自分も、ああ、就職しなきゃいけないんだな、という気になってました。主体的に努力したという気持ちがあまりないんですよ。面接やエントリーシートも、学部が経済学部で物流関係を学んでいたから、その知識だけでクリアしてしまった感じです」

そもそもが「成り行きで決まった」就職先だったわけだ。

「ほんとは航空会社にいきたかったんです。でも、ひとつも内定はもらえず、消去法で内定を貰えた物流系に就職することに決めました。3月から研修で何度か出社していましたが、その時からすでに”この会社で長くやっていけるのかな”ともやもやしていたんです」

そんな消去法での就職ゆえに、男性は入社前から違和感があったという。

入社当日のできごと

男性が特に「これは違う」と感じたのは、同期との「意識の差」だった。

「特に嫌なやつがいたとか、そういうわけではないんです。ただ、研修で顔合わせの時からLINEグループをつくったりしてるじゃないですか。あと、自己紹介でみんな、自分の趣味を”ジム通ってます”とか、うわべで話している感じがしたのが気になりました。この人たちといちから人間関係をつくっていかなきゃいけないんだなあ、これが社会人なんだなあ……と思うと、めちゃくちゃ面倒くさくなったんです」

ちょっと堅苦しく言うと、「同期の顔ぶれと波長が合わない」という話。ただ、男性の違和感は、初日に出社した時点で「引き返すなら、いまだ」と思ってしまうほどのものだったという。

結局この感覚が最後のトドメとなった。初日の入社式などは我慢して過ごした男性だったが、帰宅後に心を決め翌日出社すると、新入社員研修の担当者に退社を申し出たそうだ。

「今までも入社後すぐ退社した人はいたみたいですが、さすがに2日目という人はいなかったみたいですね。人事の方が来て午前中はずっと会議室で面談です。なにか悩みがあるのかとか、ずっと聞かれて、その日は”一度自宅で、よく考えなさい”と帰らされました」

その翌日(3日目)は、我慢して出社し、新入社員研修に合流した。しかし、やはり心は変わらなかった。

「昼に人事担当に”ランチをしよう”といって連れだされて慰留されました。その後は、課長が出てきて会議室でも。とにかく”せっかく入社したのだから、少し頑張ってみないか”とはいうのですが、このままいても迷惑をかけると思うので退社したいときちんと説明したら、もうなにも言われなくなりました」

結局、出勤したのは合計で3日間だけだった。

「会社を出た時は、ホッとした反面で、これからどうしようと思いましたよ。ひとまずは、実家に帰ってのんびりすごそうと思ったのですが、それにしても、親にどう説明すればいいのかと、ちょっと悩みましたね」

実家ぐらしからの転換点は……。

東京での生活を終えて男性は、田舎(実家)に戻って人生を考えることに決めた。しかし親も、大卒の息子を家でのんびりさせるほどに甘くはなかった。

「形だけでも、公務員を志望していることにして勉強をしろというのです。受験のための参考書は買わされるし、公務員試験のための塾にも通うことになりました。そうしているうちに、このままだとニートだけど、田舎の役場ならなんとかやっていけるかなと思うようになったんです」

こうして、秋になり地元の自治体の採用試験を受けた男性は、見事に合格。この春から公務員となった。

「まだ勤務が始まって数日です。親の目もあるので、今のところは辞めようとは思っていません。ただ、やっぱり、ここが自分に相応しい職場なのかは疑問を感じています。地元なので役所の中にも顔見知りはいますが、やっぱり人間関係をつくるのが面倒だなと感じています。もし、また人生に疑問を感じたら、突発的に辞めてしまうかもしれません」

そんな彼に、どんな職場なら「自分に相応しい」と思うのかを聞いてみた。

「漠然と考えているだけですけど、なんか静かに物づくりとかしたいんですよね。ほら、誰とも会わずに頑固一徹に焼き物とかしてるみたいな感じで。自分にピッタリな仕事がすぐに見つかるとは思っていませんが、いろいろ経験しながら探していきたいですね。今の職場では、町の人々のために役立つ仕事ができればと思います」

話を聞いて思ったが、どうやら彼は「職場の人間関係づくり」に難しさを感じてしまうタイプのようだ。ただ陽キャ的な人間関係づくりを苦手とする、寡黙な職人タイプでも、仕事ができる人は珍しくない。もし会社側に、職場の人間関係づくりをサポートする「ちょっとした仕組み」があったなら、こうしたタイプの退職を防げるかもしれない。

そもそも、新卒入社前の不安は多かれ少なかれ誰でも持っているものだ。初日や入社前のタイミングで、職場の先輩と自然に会話できるイベントを用意したり、入社前にカウンセリングを行って職場環境や配属部署についての説明をしておくなど、うまく環境に溶け込めるようなフォローがあれば、こうした不幸な退職を減らせるのではないだろうか。

【PR】注目情報

関連記事

次世代バナー
次世代バナー

アーカイブ