「いいクルマをつくろう」に私たちは技術で応える──チームで挑んだ評価環境の開発 | キャリコネニュース - Page 2
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「いいクルマをつくろう」に私たちは技術で応える──チームで挑んだ評価環境の開発

高度な技術を保有するエンジニアが集まるテクノプロ。人の力やスキルの提供だけではなく、お客様のプロジェクトを成功に導くことを目的に支援を行っています。連携してクライアントを支援する群馬支店長の市川 誠とブランチリーダーの成瀬 聡が、社内でも前例のない開発に挑んだプロジェクトについて語ります。【talentbookで読む】

エンジニアがお客様先へ出向。新たな技術を用いた研究開発を支援

テクノプロでは、エンジニアがお客様先に出向してプロジェクトを推進するケースが少なくありません。中でも多いのが、新技術を用いた研究開発を支援する案件です。

2022年7月現在、市川と成瀬は、ともに群馬支店の所属。市川は群馬支店の支店長を務め、成瀬はブランチリーダーとして研究開発をリードしています。

市川 「支店長を務めるかたわら、営業にも携わり、群馬支店全体の取引拡大を目指しています。とくに自動車メーカーのSUBARUさんは2013年から担当。案件全体の責任者として、SUBARU東京事業所を担当している営業やエンジニアの方々とも協力しながら、お客様のビジネスをご支援できるよう提案を行っています」

成瀬 「自動車の電子制御システム統括部門の開発エンジニアとしてSUBARUさんに常駐し、高効率、高品質な電子制御システムの評価環境を構築しています。昨今の運転支援システムには、自動ブレーキシステムやオートライトなど、電子制御システムが欠かせません。そして、それらが期待通りに動作することを検証するためには、膨大な評価が必要。そのための高精度で効率の良い評価環境を作ることが私の仕事です。

これまでシステム評価は、試作車が完成してから行っていましたが、それでは開発プロセスの後工程での検証や、評価の時間も限られます。そこで、試作段階での手戻りを減らし、高品質な電子制御システム開発を行うために、電子制御部品を集めた“電子ベンチ”を活用した評価環境を作ってきました。現在は、さらに一歩進んで、部品の試作前に仮想モデルを使って新しい機能のシステム評価ができる環境作りにも力を入れています」

“電子ベンチ”とは、車体を模したアルミフレームにクルマ1台分の電装部品を取り付けた、ハードウェアの評価環境のこと。これを専用の計測器やシミュレータと組み合わせて動作させることで、さまざまな電子制御システムの評価を行うことができます。

営業とエンジニアという、異なる立場から同じクライアントを支援しているふたり。仕事をする上で大切にしていることについて、次のように話します。

成瀬 「働く中では、お客様が求めていることに対して、きっちり成果を出すことを最も重視しています。

一方で、エンジニアとして何十年間も働いてきた中で、自分自身がやりがいや楽しさを感じられることがとても大事だと知りました。自分はもちろん、メンバーが楽しみや成長、やりがいを感じながら働けるような環境作りも意識しています」

市川 「お客様に満足していただくためには、エンジニアの方々にベストパフォーマンスを発揮してもらうことが何より重要です。だからこそ、エンジニアの皆さんが働きやすい環境を作ることを一番に考え、行動しています」

課題解決をチームの力で支援。大手自動車メーカーの電子制御システムの評価環境を構築

テクノプロ・デザイン社の中でも自動車分野の推進を行っているモビリティ統括部では、“ESP(エンジニアリングサービスプロバイダー)”という言葉を掲げています。そこに投影されているのは、目指す組織像、そして理想とするクライアント支援の姿勢です。

成瀬 「技術者派遣というと、お客様の手が足りないところにエンジニアを派遣して工数をカバーするイメージがあるかと思います。一方、ESPという言葉には『お客様内部では解決できない課題を、私たちが技術や経験を提供することで共に解決していく』という想いが込められているんです。

つまり、お客様が持っていない技術や経験を、ひとりのエンジニアの技術ではなく、システムやソリューション、チームの力でサポートするということ。たとえば、機械的な製品のイメージがある自動車ですが、今や電子制御で走る時代です。ですから、自動車業界では電子制御開発のノウハウやスキルが欠かせません。その部分をカバーするのも私たちの役割です」

市川 「現在、SUBARUさんに常駐しているテクノプロのメンバーは東京と群馬を合わせると200名以上となります。自動車業界でキャリアを積んできたメンバーは約半数で、その他のメンバーは通信業界など別業界の出身者です。さまざまな業界の経験や知識を活かして、SUBARUさんの自動車開発を支援しています」

2017年から始まったSUBARUとのプロジェクトは、まさに“ESP”を体現するプロジェクトでした。

成瀬 「始めるきっかけとなったのは、SUBARUさん社内での『制御品質をきちんと評価できるシミュレーション環境を作っていかなければ』という課題感でした。そこで声がかかったのが当社です。市川さんを中心に、“制御品質改善のプロジェクト”が立ち上がりました」

市川 「プロジェクトは当初、部長が『ひとりでもやる』と始めたもの。その熱烈な想いに触発され、ぜひ協力したいと思ったんです。ただ、過去に部品単体のシミュレーション環境を構築した経験はあったものの、SUBARUさんがイメージされているクルマ1台分のシミュレーション環境の構築は、テクノプロとしても未知の領域でした。

そこで、神戸にある当社の開発センターと協力して、提案内容を検討。SUBARUさんと当社のブリッジ役となるメンバーが必要という話になり、白羽の矢が立ったのが成瀬さんでした」

当時、SUBARUの実験部門で、評価エンジニアとして試作車の電装システム評価業務を担当していた成瀬。その成瀬を新プロジェクトに招き入れるようSUBARUに提案したのが、市川でした。

市川 「成瀬さんは非常にコミュニケーション能力が高く、折衝ごとにも秀でていて、開発を進めていく上でのコントロール能力に長けた方。開発経験があり、調整も円滑に進められるエンジニアとして、真っ先に名前が浮かんだんです」

成瀬 「自動車1台分の電子制御システムを評価するためには、ハードウェアとソフトウェアの評価環境を同時に構築する必要があります。

ハードウェアの扱いは、専門分野であるため慣れていたのですが、ソフトウェア部分に関しては経験豊富、というわけではありません。また、お客様と当社の開発チームをつなぐ役割が求められることも聞き、即答はできませんでした。

自分にサポートできるのだろうかと悩みましたが、当時の私は50歳手前。新しいことに挑戦できる機会は今後そうないだろうと思い、引き受けることを決めました。異動の際、前の部署のメンバーに『新しい評価環境や評価プロセスを作って、皆さんの業務を楽にします』と宣言したのを覚えています」

作って終わりではない。クルマ作りに欠かせない文化になってこそ成果と呼べる

テクノプロにとっても初めての、大規模な電子ベンチ開発。さまざまな苦労がありました。

成瀬 「自動車には、何万点もある部品の中に、電装部品と呼ばれる、電子制御に関わる部品が数百点も搭載されています。それらの全体像を把握している人はSUBARUさんの社内でも多くはありませんでしたので、図面を確認しながら、電装部品を洗い出し、電子ベンチを作るパーツを集めることがまず大変でした。

また、自動車の1台分の電子ベンチを作ることは全員が初めての取り組みでしたので、初号機を作るまでは試行錯誤の連続。思い通りの挙動をしないときは、みんなで図面を見ながらひとつずつ確認して、原因を究明していきました」

市川 「車種ごとに電子ベンチを作っていくので、ハードの配線をつなげるエンジニア、電子制御を行うエンジニアなどが必要になります。最大10名のメンバーでプロジェクトを進めてもらいました」

そして2018年、ついに電子ベンチが完成を迎えます。

成瀬 「完成品は、1台分の電装部品の塊。そして形状はクルマですが、スケルトンのような見た目です。実写では見えない部分も確認できます。完成時はSUBARUさんの社内メンバーも見に来てくださり、『これはすごい』、『この部分は、こんな構造なのか』と発見や感想などを伝えてくれたので、嬉しかったです」

ところが、新型コロナウイルス感染拡大の影響や事業戦略の変更もあり、ここ2年ほどは環境進化が思うように進みませんでしたが、2022年現在は進化を加速中です。

市川 「2022年7月現在、プロジェクトメンバーは別部署でそれぞれ活躍していて、成瀬さんだけが残って開発を継続中です。一方、電子ベンチは量産プロセスに組み込まれ、成瀬さんが以前いた部署で活用されています」

ここまで挑戦の連続だった今回のプロジェクト。構想を実現するために妥協しないのは、お客様のフラットな姿勢に支えられ、本気度に突き動かされているからでもあります。

成瀬 「電子ベンチの活用が全社の文化になって、『これがあってよかった』『これがなければSUBARUのクルマは開発できない』と言われることが目標です。今はまだ一部の機能でしか実現できていませんが、現在も部品を作る前でも評価できる環境を作るなどして、シミュレーションの領域を広げられないかを考えています。

本プロジェクトを含め、SUBARUさんと12年ほどお仕事をさせてもらいましたが、SUBARUさんとの間に、壁を感じたことはありません。所属や立場に関わらずフラットに取り組ませてもらい、気持ち良く仕事ができることも、モチベーションにつながっています」

市川 「成瀬さんのいう通りで、『外部の人間だから』とSUBARUさんが仕事を任せる範囲を限定することがありません。プロパーの方は、わからないことがあれば、成瀬さんやテクノプロのエンジニアに積極的に質問してくれます。

『いいクルマを作ろう』という純粋な気持ちで、全社が一丸となっているからなのでしょう。クルマ作りへの想いや愛が強く感じられるお客様です、私たちも全力でサポートしたいと思わずにはいられません」

難題に挑み続けられる理由は、ひとつ。楽しくて、わくわくするから

量産に寄与する電子ベンチの開発には成功したものの、成瀬と市川は、プロジェクトのゴールラインをずっと先に見据えています。

成瀬 「今は、SUBARUさんで制御開発を担う設計エンジニアや評価エンジニアの中に、『電子ベンチを活用して評価しないと、品質が上がらない』と意識するメンバーが少しずつ増えてきた段階です。電子ベンチの活用範囲をもっと広げていくためにも、私たちが支援できる領域はまだまだあると思っています」

市川 「自動車の機能は今後ますます高まっていきますし、それにともない安全性をしっかりと検証しなければなりません。人手による実車を使った対応では追いつけない以上、私たちも評価環境の構築をサポートしていく必要があります。

もちろん、実際の自動車での検証がなくなることはありませんが、シミュレーションでカバーできる領域が増えれば、開発効率の向上につながるはずです」

成瀬 「たとえば、周囲のクルマや歩行者との距離を計測するカメラやレーダー。前のクルマの速度に合わせた加減速の制御システム。夜間でも確実に周囲環境を認識するためのヘッドライト制御など。高度な運転支援システムを例にとっても、さまざまな機能を連動してソフトウェアでまとめ上げることが求められるので、複雑性が増しています。

実際に走行せずとも、ソフトウェアの挙動を正しく評価できる環境を作れれば、スピーディーに安心・安全な車作りを行う土台が築けると思っています」

2013年に市川が営業担当に就任した際には、SUBARU群馬制作所で働くテクノプロのメンバーはたった7名でした。現在では120名のエンジニアが働いています。

成瀬 「市川さんがいなかったら、こんな規模にはならなかったと思っています。彼がお客様のこともエンジニアのことも考えて、人を集めて、お客様にお話をしてくれた。それが信頼に結びついたし、こうして数字にも表れているんだと思います」

思い入れのあるプロジェクトを振り返るふたり。その目に映るのは、未来です。

成瀬 「初めてづくしの難しいプロジェクトにおいて、あきらめることなく挑戦し続けられたのは、シンプルに楽しかったからです。何もない状態から新しいものを生み出していくプロセスや乗り越えた瞬間の高揚感は、エンジニアとして一番のモチベーションですから。

チームで電子ベンチを構築する経験が楽しかったからこそ、もう一度チームを組んで仕事をしたいと思いますし、貴重な経験を積める場として、若いエンジニアを積極的に迎え入れていきたいですね」

市川 「開発の現場や環境を見学させてもらう機会がありますが、シミュレーション環境を構築する光景を見ると、すごくワクワクするんです。営業の私がこれほど心揺さぶられるのですから、エンジニアにとってはたまらないだろうなと思います。

この気持ちを味わってもらえるよう、より多くのメンバーでSUBARUさんを支援していきたいですし、今後もSUBARUさんやエンジニアの皆さんの想いに伴走していきたいです」

クライアントにとって必要不可欠な開発パートナーとなり、同じ夢を共有して、実現を目指すために。テクノプロは“ESP”を合言葉に掲げ、これからもクライアントの幅広いニーズに応えていきます。

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