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「志望動機」のウソはどうやって見抜かれるのか? 結局「正直」が一番の理由

相手が喜ぶことを言えば通るのか?

相手が喜ぶことを言えば通るのか?

採用面接において話すべきこととは、究極的には「自分はどのような能力や性格、価値観を持った人なのか」に尽きます。それを伝えることで、採用面接担当者が「この人は自社に合っているのかどうか」を判断するわけです。

この伝えるべき価値観のひとつが、いわゆる「志望動機」になります。候補者がどんな会社選びや仕事選びの判断軸を持っていて、どんな労働観や組織観、モチベーションリソース(やる気の源)、キャリア観を有しているのか、などについて自ら語ることで、面接担当者は候補者の採用合否の参考にするということです。

ただ、候補者にとっては、能力や性格は合否の判定基準が比較的分かりやすいけれど、志望動機のような価値観はどう評価されているのか全く分からないという人が多いようです。今回はこの点について考えてみたいと思います。(人材研究所代表・曽和利光)

面接では「ウソをついてもバレない」のか

能力や性格などは、実際に発揮された過去のエピソードなどを話すことで、ある程度証明できます。事実をベースに話せば「なるほど。そういう場面でそう考え、そう行動したあなたは、そういう能力や性格の持ち主なのですね」と思ってもらえそうです。

しかし、志望動機につながる価値観、平たく言えば「物事の好き嫌いについての個人的傾向」については、本人にもなぜそうなのかを説明しづらいものです。そもそも内心の話なので「そう思っているのだからそうだ」としか言えないし、相手がその真偽を知ることなどできないはずだからです。

「私は○○することが好きです。だから××に関わる仕事がしたいので、御社で働きたいのです」といった志望動機を、「あなたは本当にそれが好きなのですか? それが本当の動機なのですか?」と疑うことは難しいように思えます。それは「私は青が好きです」と言う人に、「本当に青が好きですか?」と疑うようなものです。

そう考えると、候補者の中には、本心とは関係なく相手が望みそうな価値観を話そうとする人も出てきます。どうせバレることはないのだから「言ったもの勝ち」というわけです。

初心者なら騙せるかもしれないが

確かに、初心者の面接担当者であれば、その会社や仕事が好きな理由などの立派な志望動機を語ってさえいれば評価してくれるかもしれません。初心者は、何事においても質問がしつこくなく、相手の言うことを鵜呑みにする傾向があるからです。そういう人は、相手が「好きだ」というものを「本当に?」とは疑いません。

しかし、ある程度トレーニングを積んだ面接担当者なら、そうは問屋が卸しません。彼らは、候補者の語る志望動機という価値観が本当かどうかを推し量ることができるのです。正確には、テレパシーでもない限り内心を見抜くことは困難ですが、便宜的にその信憑性を調べる問いを持っているということです。

熟練面接担当者は、候補者の志望動機の真偽や根深さをどのように見分けているのでしょうか。それには2つの方法があります。

方法1:「なぜ好きになったのか」を聞く

1つ目は、候補者がなぜそういう価値観を持つに至ったのかについての「きっかけ」を聞くことです。理屈っぽい理由ではなく、過去の出来事であるきっかけです。

人間がある強い価値観を持つに至るには「こういう環境で生まれ育った」「こういう出来事があった」「こういう人に影響を受けた」などのきっかけがあることが多いという信念から、面接担当者はきっかけを聞くのです。

ところが、どれだけ聞いても「好きになったきっかけ」が出てこず、「これはこういういいところがあるので好き」などといった一般的な好きな理由しか出てこないのであれば、「これはもしかすると、口先だけで言っているのかもしれない」とその信憑性を疑うことになります。

方法2:「好きだからしていること」を聞く

2つ目は「行動化の程度」の質問です。もし本当に候補者が言うように、彼らがその価値観を強く持っているのであれば、当然ながら価値観に基づいた行動を起こすはずです。

熟練面接担当者であれば「なるほど、そういう価値観を持っているのですね。それでは、何かやっていることはありますか?」と必ず聞きます。行動化されない価値観は、それほど強いものではないという信念があるからです。

そして、あまり大した行動につながっていなければ「彼らの言う価値観は根深くないものだ」と判断します。もっとひどい場合には「そんなに好きなことなのに、それくらいの行動にしかつながらないのであれば、ベースとなる行動力や情熱の総量が低いのではないか」という低評価すらするかもしれません。

「志望動機は評価するものではない」が新常識に

このように、内心のことである志望動機のような価値観も、熟練面接担当者にかかれば、たちどころにいろいろバレてしまいます。もちろん、本当の本当のことなど短時間の面接では分からないのですが。

ですから面接では、価値観においても「正直」であることが最良のポリシーであると思います。例えば、そこまで好きの度合いが強くないのであれば、率直に「こういう単純な気持ちで覗いて見た、というのが正直な気持ちです」と回答してもいいのではないでしょうか。

その方が、本心ではない言葉で「こういう理由で、とてもとても御社が大好きなのです」と言って疑われるよりも、よいのではないかと思うのです。

日本は少子化を背景とした人手不足時代が続きます。「志望動機は評価するものではなく、採用担当者が高めるもの」という新常識も定着しつつあります。志望動機の高低が、即採用合否につながらないようになってきているということです。そういう状況を考えれば、やはり志望動機や価値観は、正直に言ってよいのではないでしょうか。

sowa_book【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。著書に『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『コミュ障のための面接戦略 』 (星海社新書)、『組織論と行動科学から見た人と組織のマネジメントバイアス』(共著、ソシム)など。

■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/

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