「管理職になるつもりはありません」昇進を拒否する部下 上司はどうすればいい?
パーソル総合研究所から驚く内容のデータが出されています。「APAC就業実態・成長意識調査」(2019)というもので、アジア太平洋地域(APAC)14か国・地域のなかで、なんと日本は、管理職を志望する人の割合が最下位になっています。
一般社員で「管理職になりたい」と思っている人の割合は、ほとんどの国で5割を超え、インド、ベトナム、フィリピンでは8割以上です。これに対し、日本は約2割に留まるといった残念な結果となっています。
若者のみならず、本来は昇進を目指して頑張ってきたはずの40~50代でも管理職になりたい人は10%程度。50代以上では14か国・地域中唯一10%に満たないというのです。
管理職としての活き活きした姿を見せられていますか?
管理職になりたがらない理由を従業員に聞くと、「管理職は、責任が重くて忙しそう」「残業代がつかなくなるので、給料もそんなに上がらない」といった理由や、「スペシャリストとして、自身のスキルを磨き続けたい」といったものが出てきます。
このような声が、
「管理職は、自己裁量権があって楽しそう!」
「管理職は、時間を自身でコントロールできるので、働きやすそう!」
「管理職になると、やれることの範囲が広がってスキルが上がりそう!」
といった言葉になったらベストです。そのためには、以下のようなポイントを意識しながら、日々部下に接していく必要があります。
ポイント(1):管理職昇進へのネガティブな思いには、管理職という仕事への大きな誤解があります。働き方改革が進み残業がしにくくなっていく中、ボーナスを含めた管理職の給料はそれなりに高いはずです。また、管理職になって初めてわかる会社の情報や移譲される権限により、これまでより大きな仕事が出来、働きがいを感じるポイントも多いはずです。これら管理職になってみなければ分からない管理職の醍醐味を語っていきましょう。
ポイント(2):プレイングマネージャーがデフォルトの時代ではありますが、だからこそ、自分でしか出来ない仕事を棚卸し、自分がやらなくていい仕事は部下にどんどん任せていきましょう。管理職が自身の時間をプレイング業務ではなくマネジメント業務に回せるようになり、部下のほうも新しい仕事で成長することができます。この好循環を生み出すことが出来れば、管理職のマネジメント力は向上していきます。
ポイント(3):上記のポイントを実践しながら、部下には常に余裕のある姿を見せていきましょう。“話しかけるな”オーラ全開の管理職が多いのが実際ですが、いつでも話しかけやすい雰囲気を作っていきましょう。そして、自身の管理職としての夢や管理職経験の先にある夢を語っていくのです。夢を語ることは、自身の幸福感を増やしますし、その姿は部下の管理職への憧れや希望に繋がっていきます。
「管理職になれた」ということは大きな自信になりますし、普段の仕事でも自己裁量の幅が広がって有能感を感じやすくなります。管理職はまさに「働きがい」のある仕事のはずです。また、後進が成長していく姿を見られることは、部下とのかけがえのない絆を生み出し、自身の成長の糧にもなります。そんな管理職の本質を言葉と行動で伝えられる状況を作ってまいりましょう。
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【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。