整体の”強もみ”は本当に必要? 施術後の痛みは「好転反応」ではなく神経損傷の場合も
そもそも、「凝り」の定義を調べると”筋肉の張り”と出てくることが多く、明確に「凝りとはこれである」というものが出てきません。筋肉の動きには、同じ姿勢をずっと続けるといった関節動作を伴わない等尺性収縮と、ダンベルを上げ下げするような関節動作を伴う等張性収縮があります。
文献などをみると、凝りとはおそらく前者の等尺性収縮による”筋膜の張り付き”。筋肉の滑走性が奪われ、なおかつ血流も阻害された際におこるものだと考えられることが多いです。最近流行りの”筋膜リリース”とよばれるものは、この張り付いた筋膜を剥がす手法のことです。
その凝りに対して、さまざまな手技が行われます。その中のひとつが”強もみ”。しかし実際は、加減のわからない施術者が知らぬ間に強もみをしていることが多く、後日、施術を受けた方が体の痛みを訴えることがあります。
そして「それは好転反応です」という言葉で片付けられることが多いです。この言葉は魔法の言葉で、言われた側は「体がよくなるなら」と納得をせざるを得ないし、施術者側からすると痛みを出してしまった”言い訳”として使われることも多いです。
強もみは打撲とほぼ一緒。強い衝撃によって骨との間に挟まれる組織が破壊されるようなものです。しかも、ある程度強く押しても大丈夫な筋肉(お尻などの分厚い筋肉)と、強もみするとすぐに破壊されるような筋肉(ふくらはぎなどの筋肉)が存在するので、経験値が高い施術者でないとその判断が難しい。
確かに、もみほぐしによるプラセボ効果は否定できません。筋膜がある程度離れ、血流が回復し、触れられるという行為によるオキシトシンの分泌でストレスや筋緊張が軽減されることもあるでしょう。
たとえ整骨院でも”セカンドオピニオン”は必要
それでも、強もみによる後にくる痛みは、不快以外の何者でもありません。中には肋骨にヒビが入ったり、神経損傷してしまったりという報告があります。よい施術者であればあるほどギリギリのラインで施術するし、先に「これは揉み返しがでるかもしれない」と伝えられます。
僕も、場所によりますが、張り付いた組織を剥がすためにあえて強く押すこともあります。つまり自分の加減がわかり、ある程度体の事情を理解しているからこそできることです。ただ実際、等張性収縮をするような適度な運動をすることでほとんどの凝り感はとれます。
さらに問題なのは”揉めば揉むほど体が慣れる”という現象。強もみに体が慣れてしまうと、いくら強く押しても効かない体になり、物足りなさを感じてしまうようになります。揉めば揉むほど悪化していることに気づかず、「もっと強く」という悪循環に陥る。そしていつの日か、ベッドが傾くくらい押しても平気な体になってしまいます。
怪我をしたら不快なのは当たり前。そして怪我が治れば不快じゃなくなるのも当たり前。それと同じで、強もみで実質的に怪我を作り、その痛みが解消したらスッキリ、という状態になってしまっている人もいます。それに対して施術者が「好転反応です」と伝えることにはやはり違和感が残ります。
身体を揉んでもらってスッキリしたい、と思うのは自然なことです。しかし、その中で不快感があれば、きちんとした説明を受ける必要があります。「おかしいな」と思ったら整体でもセカンドオピニオンが必要です。「好転反応です」で片付けられないように、しっかりとした判断や見極めが重要になります。施術者側としても必要な知識や情報は確実にもっていないといけません。
現代は”スマホ巻き肩”とよばれる世代特有の体の変化もあるし、日常生活での疲れは切っても切れません。せっかくのリラクゼーションの時間が不快なものに変わらないように受ける側も施術する側も考えていかなければいけない問題だと思います。
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【筆者プロフィール】ちばつかさ
合同会社komichi代表。柔道整復師、こころと体のコーディネーター、元プロ野球独立リーグ選手。東京と福井で投げ銭制の接骨院を運営しのべ10万人近くの心と体に向き合ってきた。野球経験とコーチングの経験を活かし都内で“野球を教えない野球レッスン”を運営。レッスン卒業生がU12侍ジャパンの代表に選出された。現在、心理学を学ぶため、アラフォーで大学在学中。【公式サイト】