「仕事が残っていても定時になるとすぐ帰る部下にモヤモヤ…」 管理職はどう向き合えばいい?
担当する管理職向け研修の中で、ある参加者からこんな相談が寄せられました。
「うちのメンバーで、17時半の業務終了の鐘が鳴ると、一目散に帰るメンバーがおりまして……早く帰るのはいいのですが、仕事が終わっていなくても帰ってしまうもので、もう少し成長のための仕事を頑張ってくれないかなと悩んでいます」
皆さんのメンバーにも、そんな人いませんか? もちろん残業はしないに越したことはありません。あまりに業務量が多い場合は管理職が配分を考え直す必要もあるでしょう。
ただ、通常の業務量であっても、ときに重い仕事が回ってきて定時では終わらないことがあるものです。今回は、こうした一見やる気の無いメンバーをどのようにサポートしていけばいいのかについてお伝えします。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
“やる気が無い”のではなく”やる気を見失っている”状態
私が新卒で入社した平成一桁時代は、まだまだ右肩上がりの経済でした。なので、”今の頑張りが未来を明るくしていく”と思うことが出来ました。しかし、現在働いている方々の多くが右肩上がりの日本を見たことがありませんし、想像すらできないのが現実です。
そうなると遠い未来に対し、希望を見出すといったことが出来なくなります。私のように「ゆくゆくは良くなるから、今を頑張ろう!」とは思えないわけです。
定時になると仕事をそのままにしておいて、すぐ帰るメンバーの多くは、将来に希望を見いだせず、目の前の仕事に対する”自分自身のモチベーション”を見失っている可能性があります。ポイントは”やる気が無い”のではなく”やる気を見失っている”状態かもしれないということです。
やる気を取り戻す2つのポイントとは?
現代で働く多くの人が、目の前の仕事に対して意義や自分自身の充実を感じたいと思っています。しかし、現代社会は世代間ギャップやダイバーシティの広がりによりコミュニケーションが希薄化しがちで、仕事の意義や充実感を感じにくいのが実際です。
対策としては、次の2点が挙げられます。
1つ目は、瞑想や自分自身を振り返る時間を持つことです。Googleでは業務時間内にマインドフルネス瞑想を取り入れて有名になりましたね。必要なのは今という時間を感じ、自分自身の現在の状態を確認していく作業です。
2つ目は相互理解を促すコミュニケーション改革です。人は他者との関係性の中で自分自身に気付いていきます。お互いの本音を語り合える場を作っていき、本音のコミュニケーションを行うことで仕事の意義や充実感への気付きを与えていきます。
小さな階段の設計が一人ひとりのモチベーションを更に向上させる
仕事の意義や充実感をさらに上げるためには”成長実感”を演出することが大切です。以下の3つのステップを刻んでいきましょう。
STEP1:仕事を任せる(目標を決める)
STEP2:やり遂げる(達成経験)
STEP3:振り返る(内省)
管理職者はつい「今年は○○がしっかり出来るようになっていこう! 何かわからないことがあったら何でも聞きに来なさい!」と大きな仕事を、ざっくりと任せてしまいがちです。しかしコミュニケーションが希薄な社会においては、メンバーの方から聞きに来ることはなかなかありません。ふたを開けて見ると”何もできていなかった……”なんてことがよく起こっています。
そのため「今年の目標は○○」でも、それを小さく分解し、こまめに目標を伝えていくことが必要です。「小さな目標を決める→小さな目標なので達成しやすい→振り返りもしやすい」といった好循環を回していくのです。この達成経験が成長実感を上げ、モチベーションを更に向上させていきます。
今回は、仕事が終わってないのに業務終了の鐘が鳴るとすぐに帰ってしまう”やる気を見失った方”に対して、いかにやる気を取り戻していくかについてお伝えしました。
管理職の皆さんとしては、メンバー個々が自分自身を振り返る時間をとる工夫と、本音のコミュニケーションがなされる場の設計をしっかり進めてください。そのことが、モチベーションの高い集団を作り、組織成果を上げていくことでしょう。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。