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やっと面白くなってきた『どうする家康』 天下人の秀吉と、空気を読めない徳川勢の対比がいい!

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少し前まで、「今年の大河は面白うない!」という話ばかりして、その都度反感を買っていたものだけれど、ここ3週ぐらいの放送回ではそこまで不満もなかった。

小牧・長久手の戦いをちゃんとやったことで「こういうことが出来るんなら、金ヶ崎でもちゃんと描写してればよかったのに」という不満こそあれど、やっぱり戦国時代の大河だから合戦をやってくれればそこまで不満もないのだ。

加えてムロツヨシ演じる羽柴秀吉の衣装も、現存する秀吉のものと非常によく似た精巧なものが用意されていて、そのダサさが秀吉らしさを底上げしている。佐藤隆太演じる羽柴秀長の懐刀感というか、出過ぎず、目立たないようでちゃんと暗躍している感もいい。

何より彼ら大坂勢がちゃんと脚光を浴びることで、対照的に不遇を強いられているこの時期の三河勢のリアリティも増すのだ。(文:松本ミゾレ)

主人公・家康は相変わらずわけわからない感じだが……

8月27日に放送された第33回「裏切り者」では、家康の旧臣である石川数正(演:松重豊)が大坂と三河を行き来するうちに、今の三河では秀吉との再戦で負ける可能性を危惧するようになる。そのために家康配下の好戦的な若い連中とは意見が対立してしまう。

果ては数正は調略されたとまで言われる有様で、ちょっと気の毒に映ってしまう。史実通り数正は妻子や家臣団を連れて出奔してしまうが、そもそもの出奔理由については今も様々な説が存在している。

視聴者目線でも数正の出奔は仕方がない部分もあったと感じられるところ。たとえば大坂城で秀吉が旨そうにすももを頬張っていたが、そのすももは本話冒頭から登場する真田昌幸(演:佐藤浩市)と同じ画角にも収まっていた。

実際、昌幸の元には秀長が訪れており、すでに調略済み。この後勃発する第一次上田合戦で真田は徳川に対して反旗を翻してしまう。

ドラマでは三河の家臣団たちはもちろん、家康(演:松本潤)ですら秀吉に対しては未だに戦う姿勢を見せていたけど、たった1人、数正だけが現実を認識していた。だから孤立もするだろうし、そんなに出奔されたくなかったら大坂には数正を派遣するのではなく、主戦派を立てればよかったのに……とすら思ってしまう。

もっと言えば、亡き妻・瀬名(演:有村架純)の影響を受けて家康は争いのない日本を作ることを目指しているが、それを天下統一という形で秀吉が成しつつあるのだから、それに従うのが道理。それを何故か「秀吉だけは許さん」と息巻くので、相変わらず僕はこのドラマの主人公がわけのわからん男に見えてならない。

しかし、そういう“家康とその家臣団だけが空気読めてない”状態というのが、ここに来て秀吉とのいい対比になっている。

見た目に分かりやすい秀吉と家康のパワーバランス

本作の秀吉とその直参たちは、きらびやかな衣装に、絢爛豪華なセットがあてがわれた、まさにこの時代でも別格の存在になりつつある。その上で秀吉は稀代の人たらし。家康の使者としてやってきた数正を結局は家臣として引き入れることにも成功している。

そしてこの数正は、三河の戦術の一切をその頭に入れた参謀格であるため、三河勢は数正の出奔によって、根本的な戦術レベルから改革を強いられることとなる。具体的に言えばこれ以降、三河は旧来の戦術をほとんど捨て、甲斐武田式の戦術を取り入れることを余儀なくされる。

このあたり、実際に秀吉が数正を掌中に収めるまでのいきさつも、相当エグいことがあったのかもしれない。

とにかく、どんな手を使ってでも欲しいものは手にする。元々は農民だったとも端柴売りだったともされる秀吉は、まもなく豊臣姓を名乗ることを許されるようになるまでに出世し、名実ともに日本国のトップに君臨する。

だからこのドラマでも、秀吉のいる空間の絵づくりにはとにかく豪著さを取り入れまくっている。眼にも毒々しく華やかであり、これだけの贅沢を可能にする秀吉が、もはや国内に敵なしであるということを、視聴者に視覚的に訴えている。

対して、未だに秀吉打倒云々言っている三河勢はどうか。相変わらずセットも特段の変化もなく、衣装も貧乏臭さこそないけれど、地味。この違いは間違いなく意図的に作られているもので、三河の現実を視聴者に気付かせるためにもかなり効果的に作用している。

そして家康はかなりの倹約家だったそうなので、そういった情報を鑑みればこのセットと衣装でも間違いはないのだ。

この三河と大阪とでは、もはや文化レベルに大きな開きもあるので、双方の実情を知る数正が大坂に下るのも仕方がないと、観ている者には納得させるだけの対比ができている。

豪華なセットが用意された秀吉自体はこれまでの大河でも何度か登場したけれど、併せる形で地味で田舎臭い三河を治めながら、現実を考えずに秀吉への対抗意識をひたすら燃やす家康というのは、あまり見た記憶がない。そういう意味では本作の家康は、新しい家康像の確立に貢献しているのかもしれない。

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