『どうする家康』関ケ原の描写どうだった? 西軍武将の活躍、もう少し丁寧に描いてほしかった
視聴率が振るわない、脚本が微妙、などと言われながらも終盤に差し掛かってきたNHK総合の大河ドラマ『どうする家康』。11月12日放送の第43回のタイトルは「関ヶ原の戦い」ということで、関ケ原における東軍、西軍の激突が描かれる形となった。
ご承知の方も多いように、この戦いは日没までに決着がついている。そのため今回の放送で結末まで放送された。石田三成(演:中村七之助)がついに自ら出陣、小西行長、大谷刑部吉継なども布陣するところで小早川秀秋や吉川広家らの動静が不穏になったことで、東軍、西軍ともに予断を許さない情勢が繰り広げられるのも史実通り。
三成と家康(演:松本潤)の対立に関しては、ちょっとここまでの流れに無理があったというか、目線の先に違う星を見ていたという表現があんまりしっくりこないまま直接対決と相成った感は拭えない。
しかし中村七之助の熱演のおかげで、今回の大河の西軍に肩入れをしたくなった。天下を獲ることを家臣らにも熱望されて決起した家康に対して、本作の三成はあくまでも豊臣のために立ち上がった形となるが、智勇でいうところの“勇”に欠けている点は従来の三成像をしっかり踏襲している。
そのため前回描かれた肝心の調略合戦でも、家康が具体的に味方をした場合の褒美についての書状を書いているところを、あくまで三成は秀吉の恩に報いるように方々に連絡して回り、このせいで結束がままならない状況。
そうこうしている間に関ケ原で両軍の布陣は完了し、井伊直政(演:板垣李光人)の先制攻撃という形でついに戦いの幕が上がった。(文:松本ミゾレ)
気になる人は気になるCGの馬
本作では色々なものがCGで描かれているというのも大きな特徴。たとえば馬は、第1クールでもCG製のものが登場し、目の肥えた視聴者からは「あれはちょっと」という反応も出ていた。
今回の放送でもCG馬は出てきたんだけど、恐らく実物と思しき馬も登場していて、俯瞰で見ればそんなに気にならないような出来栄えにはなっていた。
そういえば井伊直政隊の中に、直政が甲斐の赤備えからそのまま引き抜いたであろう精鋭(武田軍に当初から数名いた、骸骨みたいなメイクをしている兵のことね)が布陣していたのも心強く見えた。
一方で気になったのが、西軍主要武将の活躍の乏しさ。井伊直政隊が序盤で激突していたのが、旗印を見るに多分宇喜多隊なんだけど、本作では宇喜田秀家(演:栁俊太郎)が登場しているにも関わらず、セリフどころか出演シーンも回想のみ。
さらに西軍には島津隊もいたが、この島津が家康本陣に突撃を仕掛けるシーンこそあれど、そこに島津義弘も豊久も登場することはなかった。ちょい役でもいいから、ここは誰かキャスティングして欲しかった。前回では本当のちょい役として山内一豊ですら登場していたのに。
それに、関ヶ原の本戦が終結した後には西軍側について諸将たちの処遇がナレーションとテロップと、各武将の回想シーンの流用だけで終わったのもちょっと肩透かしだったかなぁ。
逆にもう病弱でほぼ動けないはずの大谷刑部(演:忍成修吾)が抜刀している小早川隊に少しだけ善戦してたのは面白かったけど。
西軍にもうちょっと奮戦するシーンとか、あとは小早川隊に続いて離反した裏切り四将たちのことも「朽木が離反しました」みたいに伝令のセリフぐらいで抑えてくれれば、もっと家康の調略の成果が可視化されて良かったと思う。
それこそ本作では、家康がとうとう勝てなかった武田信玄(演:阿部寛)が、勝者はまず勝ってから戦に臨むという話をしていた。家康の前回における書状連発シーンはこれに倣ったもので甲斐武田以来の勝利の鉄則である。なのでせっかく下ごしらえが奏功したわけだから、演出でもわかりやすく表現されてればなぁ。
茶々の鬼気迫る表情の方が関ヶ原の戦いより迫力があった…
一方でこの回では、大坂にいる茶々(演:北川景子)がまだ幼い豊臣秀頼を出陣させようと毛利輝元(演:吹越満)を散々急かすシーンから始まり、ことの成り行きが進むにつれて怒りの感情をむき出しにする演技も印象的。
思い通りに行かない事態にはしっかり憤り、阿茶(演:松本若菜)の物言いに対しては扇子を突きつけて激昂するという様子は、本作においてのラスボスとして十分の迫力が見て取れる。
彼女の母親であるお市の方と同じ女優が演じているとは思えないほど、こちらの北川景子は悪辣でカリカリとしていて、パチンコで午前中に3万ぐらい負けた後にチャリもパクられたおばさんのような殺気に満ちているのだ!
しまいにはあっけなく総崩れとなった西軍の報告を耳にした際、輝元に平手打ちする。この直前の輝元をゴミを見るような目で見下す顔も恐ろしいもので、本作では秀吉を恨んでいたはずなのに、今では茶々自身が秀吉ばりに恐ろしい人間になっていることを視聴者にも伝えてくれる。
ちなみに次回予告では幼かった秀頼が急激に成長。江戸幕府も開いてさらに時間が経過している様子。本作は全48話で最終回は12月17日となるため、本当に家康の人生の最終盤に差し掛かったこととなる。
ここからは主だった戦も、二度にわたる大坂の陣のみ。そして、最後に立ちはだかるのが北川茶々。なんか登場以降、陰の主役みたいになっているので、どういう最期になるのか気になるところ。
逆に主役勢に関しては相変わらず興味や愛着を持てない退場の仕方をしていくのだろうか。これが去年の大河とはだいぶ違うところだ。