『ファーストガンダム』から『Z』に至る劇的な作画進化の要因となった『ダンバイン』『エルガイム』という作品たち
『機動戦士ガンダム』の放映は、1979年。ギリギリ70年代のアニメ作品とだ。シナリオの展開は素晴らしいものであるが、一方で作画には古臭さ、おおらかさを感じることも多かった。
ザクはやけに柔らかそうだし、三枚目顔のジョブ・ジョンが信じられない美形で登場した回もある。この伸び伸びとした作画は、やっぱり時代がなせたものと言うか、あの時代だから許された節はあると考える。
しかし、1985年放送の『機動戦士Zガンダム』ではそうした大雑把な要素がかなり減っている。なんせオープニングのアニメのクオリティの高いのなんの。映画作品顔負けの神作画であったし、本編も流石にオープニングのレベルには及ばないものの、初代ガンダムからの進化を感じられた次第である。
はてな匿名ダイアリーに12月に寄せられて話題になった「ガンダムをファーストから順に見てる」という投稿でも、「Zに入ったら作画レベルが急に上がってびっくりした」と書き込まれているし。この人物もまた、僕と同じく作画の変遷について、舌を巻いたようだ。
79年の『ガンダム』について、この日記では絵柄がファミリー向けで、メカも線がヨボヨボしていると指摘。一方で85年の『Z』については、MSがグリグリ動き、洗練されたデザインをしていること。さらに登場人物についても、美麗と評している。
『Z』レベルの作画を連発していた『エルガイム』
実はこの変化、いきなり初代『ガンダム』から『Z』にすっ飛ばすから度肝を抜かれるだけで、実際にはかなり正統な進化を遂げている。というのも、初代『ガンダム』放映後も、制作元の日本サンライズは『Z』までの85年までに数多くのロボットアニメを生み出し続けたし、その都度作画も進化している。
80年には『伝説巨神イデオン』が放映されているが、早速この段階でも、『ガンダム』ではまだ見られなかった複雑なパネルラインの主役ロボが台頭している。
83年の『聖戦士ダンバイン』では、曲面の美しいオーラバトラーたちが縦横無尽の活躍をしていたし、生物的なラインの迫力を遺憾なく描写されている回も散見されるようになっている。
翌84年に放映された『重戦機エルガイム』では、既に本編も『Z』レベルの水準の作画が連発されるようになり、粗探しのような作画崩壊探しの目線を伴わなければ、しっかりと”観賞できる”ようになった。
日本サンライズが『ガンダム』以降産出したロボットアニメは、他にも数多ある。例として挙げたのはほんの一部だ。たった5年程度の間に、いくつものロボットアニメが生まれていき、その過程でクリエイター側の技術も高まっていき、そうして『Z』では如実に進化した作品として認知されるようになったわけだ。これは凄いことだと思う。
「30年分くらい一気に時が進んでいる」という声も
ロボットアニメとして、恐らく日本でも最も有名になった作品『機動戦士ガンダム』。その5年後に放映された『Z』で見せた作画の良さは、当時ロボットアニメを量産しまくっていた時代背景を考えれば、真っ当な進化だったと言えるだろう。
匿名ダイアリーに寄せられたコメントの中にも、次のような声が寄せられた。
「『超時空要塞マクロス』(82年放送。スタジオぬえ原作、タツノコプロ・アニメフレンド制作)があって、TVアニメより作画に力を入れたOVAが出来はじめてきて、1作目人気を受けての続編だしね。作品だけでなく当時に作品がどう受け止められてたかを知るのも面白いと思います」
「『Z』は後期OPでガンダムMK-Ⅱが攻撃を盾で受けて爆風から現れる動き、効果音、歌のイントロ、ベース音で好きにならずにいられなくなった」
「80年代になってからのアニメ作画の飛躍はすごい。30年分くらい一気に時が進んでる」
『Z』は作風こそ暗いアニメだけど、ファーストの正統続編であり、作画レベルの高まりも感じられる作品である。そのため今回の「作画」だけに限らず、今後も定期的にさまざまな面で再評価される機会も多いことだろう。