あまり知られていないが、食べきれなかった食品の「持ち帰り」は国策として実施されている。環境省では2020年「mottECO(もってこ)」というキャンペーンを始め、飲食店に持ち帰り容器の提供を奨励している。これを受けて外食大手の中にも持ち帰りのための容器を準備しているチェーンは増えている。メジャーなところでは「デニーズ」「ロイヤルホスト」「びっくりドンキー」などが「mottECO導入事業モデル」に参加している。
とはいえ、首都圏では「持ち帰りたいので容器をください」といったときに、準備してくれる店舗はまだまだ少ない。筆者の知る限り、最初から食べきれないほどの大盛りをウリにしている店か、中華料理店程度である。環境省などではフードロス削減の有力な手段として推奨しているが、飲食店側では食中毒の危険性があるため、早急な導入を躊躇しているのだ。
ただし、この事情は、首都圏を離れると変わってくる。特に西日本では飲食店での持ち帰りが文化として定着している地域が多い印象だ。
関西圏の人に話を聞くと「食べきれなかったから持ち帰りたい」といえば、断られるイメージはないという。「外食の時に、うちの母親は最初から食べきれないことを想定して容器を持参していた」なんて話もあったが、これはレアな意見かもしれない。
さらに広島県出身者からは、こんな話も。
「県全体がそうであるかはわかりませんが、私の出身地(広島県東部)では、持ち帰りはごく自然な文化です。“タッパーください”というと、すぐに容器をもってきてくれますよ」
ちなみに、この文脈では、「タッパー」は「持ち帰り用の使い捨て容器」の意味だという。
このほか九州や四国のあちこちでも、「うちの地域では持ち帰りは当たり前だ」という話を聞いたことがある。これまで、日本では飲食店での残った料理の持ち帰りは一般的ではないと思われていた。しかし、実際には全国各地で極地的に持ち帰り文化のある地域が点在してきたようだ。
果たして、全国に持ち帰り文化が普及している地域はどのくらいあるのだろうか。
それを明らかにしたのが環境省の「飲食店における食べ残しの持ち帰りに関するアンケート調査」だ。
この調査では、全国47都道府県のうち37都道府県で、持ち帰りをしたことがある人の割合が20%を越えているという結果が出ている。都道府県別の「食べ残しの持ち帰り経験」があると答えた人のランキングは、以下のようになっている(上位5位)。
沖縄県:47.1%
秋田県:42.9%
愛媛県:34.8%
鹿児島県:31.7%
茨城県:31.1%
日本では持ち帰りは例外と思いきや、予想以上に充実している地域があるようだ。
そこで、沖縄県出身者に聞いてみると……
「あまり知られてない文化ですが、大抵の店は持ち帰りが当たり前で容器も準備していますよ。沖縄そばだって持ち帰りは可能です」
さらに、秋田県出身者に聞いてみたところ
「自分はやったことないが、生ものでなければ持ち帰りをする人は多い印象です。理由は本当にわかりません」
「持ち帰り」が根付いている地域には、何か共通点があったりするのだろうか……。それが解明できれば、持ち帰り普及のための前提条件が見えてくるかもしれない。