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政府が後押しする自治体による「AI婚活」の効果は? 埼玉ではすでに数十組がAIの紹介で成婚

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2018年にAIを活用した婚活サポート「恋たま」を始めた埼玉県では、これまでに4500人が登録。好評を得ており、69組が成婚に至っているという。キャリコネニュース編集部は、県少子政策課の担当者に婚活におけるAI導入のメリットを聞いた。

「恋たま」では2019年度、38組の結婚が成立。このうち21組はAIが提案した相手との結婚を選んだ。20年度に関してもすでに28組の成婚が決まっており、うち11組はAIの提案した相手と結ばれたという。

恋たまの入会条件は、県内に在住、在勤、または移住を考えている独身男女であること。利用登録には2年間で1万6000円かかり、3年目以上は更新の有無を選ぶことになる。

県の担当者は「男女比は6対4くらい。利用者は20代から幅広くいるものの、多いのは男女ともに30代」と話す。

入会者は登録終了後、ウェブ上でアンケートに答える。「結婚相手を選ぶ上で重視するのはA、Bのどちらか」など性格や価値観などに関する2択の設問が110問ほどあり、回答結果を受け、AIが過去の交際、成婚事例と照らし合わせて、お薦めの相手を提案する。

県は、こうしたAI婚活のメリットについて

「利用者からは『自分では普段選ばない人だったが、会ってみたらいい人だった』という声も多数寄せられています」

と利用者の反応を明かす。価値観の合いそうな人をAIが選ぶことで、余計な先入観を取り払って、相手の本質と向き合うことができそうだ。

政府が発表した来年度予算の概算要求については「AIは少子化対策の分野でも必要。国の動きを伺いながら対応を検討したい」と答えた。

「結婚する、しないは本人の意思。価値観を押し付けることは絶対にありません」

内閣府子ども・子育て本部の担当者は、20億円の使い道について、

「ニーズは自治体によってマチマチ。それぞれに考えてもらい、手を挙げていただく形になると思います」

と説明する。「AIのシステムだけあっても効果は出ないので、他のサポート体制と上手く組み合わせて導入してほしい」と期待を込めている。実際には、AIシステムの新規導入のほか、実装に至るまでの一定期間のランニングコストに充てることも想定しているという。

内閣府によると、AIによる結婚相手の診断はすでに民間事業者では広く使われている。担当者は「民間事業者が結婚相談所や婚活パーティーも開催しているように、システムだけでやっていくのは難しい」と話す。地方自治体も、民間と同じように対面のサービスを併用して進めていく必要があるという。

では、自治体の婚活サポートを使うメリットはどこにあるのか。担当者は、

「民間の結婚相談所などに比べて低費用で利用できるほか、自治体が主催しているから安心できる、との好評も寄せられています」

と話す。各自治体の婚活サポートも民間に委託されることが多いものの、直接民間で受けるサービスを受けるよりもお得で安心できると考える人が多いようだ。

さらに、AIを活用したシステムではマッチングの比率が高まることも期待されるという。「従来のシステムでマッチング率13%だったのに対し、ビッグデータを活用したことで29%に増えたという自治体もありました」とAI婚活の効果を紹介した。

一方で、同担当者は「あくまでAIが知らない人同士を勝手に結びつけるわけではありません」と強調する。

「結婚する、しないは本人の意思。価値観を押し付けることは絶対にありません」

政府としても結婚しないことを責めたり、早く結婚するように押し付けたりする目的はないという。

では、なぜ来年度予算に20億円も計上するのか。理由については「年々婚姻件数が減少しているのに反して、意識調査をすると『いつかは結婚したい』という人が男女ともに90%を超えます」と理想と実態とのギャップを指摘する。

回答者に結婚ができない理由を聞くと、決まって1位には「出会いのきっかけがない」という声が寄せられるという。

「少子化対策では、少子化の要因を一つ一つ丁寧に取り除くことが大事になります。まずは結婚したい人に対し、出会いの機会を設ける支援をしたいという思いからやっています」

ツイッター上では「誰が相手かじゃなく誰が相手であれ若者が結婚・出産に踏み切れる経済的環境の整備にリソースを使えよ」という指摘もあった。結局のところ、経済環境をはじめ、マッチングにとどまらない、結婚、出産、育児をしやすい環境を整えることが求められているのは現実だろう。少子化を防ぐ道のりはまだまだ長くなりそうだ。

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