男性の妹(40代)の職業は、クラシック音楽の演奏家。音大卒で、楽団に所属するまっとうなプロである。
その生活の一端は、彼女のインスタグラムにあらわれている。
「投稿を見ていくと、有名な高級店のパンを買ったとか、どこそこの有名店で外食をしたとか、キラキラした見た目の手作り弁当の写真とか、そういうのが毎日のように投稿されている。その合間にコンサートの練習風景とか、ドレスを着た演奏風景とかが入っています」(男性)
その投稿だけを見ていると「まさに優雅なセレブ生活そのもの」(男性)なのだ。
実際にはアルバイト暮らし
ところが、その実態はまるで違う。所属しているのは規模の小さい楽団で、報酬は年間400万円程度。しかも、いわゆる「正社員」とは違い、雇用が保証されているわけでもない。
インスタにあらわれている暮らしぶりは、その実態を知るものからすれば、ごく一部にスポットライトを当てた、まさに「虚飾」としか言えないようなものなのだ。
「妹は週の半分くらいは、デパートの食品売り場でアルバイトしていますし、むしろそっちのほうが本業なんじゃないかと思います。住んでいるのもワンルームのボロアパート。親にめちゃ高い音大の学費を支払ってもらった結果がこれかと思うと、唖然としますね」
実際、男性は妹に会うたび「人付き合いで、お金が出ていくので貯金ができない」と愚痴られるそうだ。
ロンドンに住む「彼氏」が登場
そんな妹が「いま、ロンドンに住んでいる証券会社の人と付き合っている」と言い出したので、男性は驚いた。
聞いたところ、その「彼氏」はロンドン在住の日本人で、証券会社勤務。日々、優雅な生活ぶりを報告し、ネットで甘い言葉を送ってくるのだという。
2人の出会いのきっかけはマッチングアプリ。男性は真っ先に「国際ロマンス詐欺」という言葉が頭をよぎったという。
「当たり前でしょう。瞬時に詐欺か妄想かのどっちかだと思いましたよ。妹は『やはり世界を知っている男は違う』とか、自慢げに力説してきて、まるでフジテレビの『ザ・ノンフィクション』に出てくる、だまされた人の回想シーンのようでした」
確かに、めちゃくちゃ怪しい……のだが、男性は特に妹への忠告をするわけでもなく、黙って見守ることにしたそうだ。
「実際、妹もいい年齢ですし、僕が何か言っても話を聞かないです。個人的にはむしろ、この先になにが起こるのか知りたくてたまらなくなり、以前より頻繁にLINEをするようになりました」
さて、妹の「彼氏自慢」は3カ月ほど続いたが、ある日突然、その話題が出なくなった。
「後から聞いたんですが、突然連絡が取れなくなったとか。それは、きっとコイツからはカネは取れないと値踏みされたんだと思いましたけど、口には出しませんでした」
逆に言うと、国際ロマンス詐欺師を「3カ月も騙し続けた」のだから、妹のセレブ偽装は実に堂に入ったものだといえる。
そんなことがあっても、「私はプロの演奏家」と、プライドがめちゃくちゃ高いのは変わらないらしい。
男性は「ガチでトラブルに巻き込まれる前に、目を覚まして相応の暮らしをしたらいいと思うんですけどね……」と話していた。