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画像はイメージ
1990年代にテレビで放映された『高校教師』は、女子高生と男性教師の禁断の恋を描いたドラマだ。再放送で見たことがある人もいるだろうか。現在40代の筆者も再放送で最後まで見てショックを受けた。だがまさか自分がドラマさながらの体験をするとは夢にも思わなかった。高校時代、教師に思いを寄せられ、告白されたのだ。
相手は国語教師のA先生だった。東大卒で、当時30歳か31歳の独身。見るからに真面目そうな先生だったから、受けた衝撃はドラマ以上のものだった。(文:めり〜な)
ウケ狙いで、『高校教師』をネタにした英語劇を授業中に披露
きっかけは英語の授業だった。グループを組み英語劇をやることになり、女友達5人ほどと『高校教師』をベースにした劇を作って演じた。だがドラマと違い、女子高生が憧れの教師と結ばれ妊娠するが、卒業と同時に結婚するというハッピーエンドにした。
私は主人公の女子高生役だった。すると女友達の一人が、「リアルにするために、ドラマの俳優ではなく、校内の先生がいいね」と言った。「独身の先生がいいよね、でも生々しくない感じがいいね……」とみんなで話し合い、男性教師役の女子が「A先生がいいんじゃない?」と提案した。もちろんウケ狙いだった。おもしろいかもと思った私はOKした。
こうして当日、A先生の子を妊娠、結婚する女子高生役になりきり、クラスのみんなの前で楽しく演じた。だがどういう経緯か、この話が A先生の耳に入ってしまった。
まっすぐ見つめられ、「それでも僕でいいんですか?」
それから数日後のこと。国語の授業の後、私はA先生に「ちょっといいかな」と呼ばれた。それまでA先生に個別に呼ばれたことがなく、直感的にあの劇のことがバレたと思った。A先生の待つ教壇に行くと、「今日の放課後、理科室に来てください。話があります」と淡々と言われた。
急に怖くなり、英語劇を一緒にやった女友達に、泣きそうになりながら呼び出しの件を報告した。そうしたらみんなが、
「理科室の外で待っててあげる。それでもし、15分経っても出て来なかったら、中に入っていく」
と言ってくれた。心強かったが、放課後ビクビクしながら理科室に向かった。部屋に入ると、すでにA先生が待っていた。そして開口一番に、
「英語劇で、僕の子どもを妊娠した役をやったんですか?」
と尋ねてきた。あぁ怒られると覚悟した私は、はいと頷いた。調子に乗ってしまった自分が悪いと思い、先に謝ろうとした。するとA先生は思いもよらない言葉をかけてきた。
「僕は〇〇のことを愛おしいと思っています」
ええー!!?? なんでそうなるの??? と、腰を抜かしそうになった。しかも、いつも先生は生徒を名字で呼ぶのに、この時は名前呼びで。どうやらA先生は私が本気で好意を抱いていると勘違いしているようだった。呆気に取られ、何も言葉を返せずにいた私に、A先生はこう続けた。
「でもあなたはこれから大学に進学し、いろんな男性との出会いがあると思います」
勘違いされたのは嫌だけれど、振られることになりそうだから成り行きに任せ、このまま黙っておこうと思った。ところがA先生は私の目をまっすぐ見つめて、次の瞬間にこう言い放った。
「それでも僕でいいんですか?」
ああああ……と、私は思わずその場に崩れ落ちそうになった。その後、どうやって部屋から出たか、覚えていない。多分、あれは英語劇の設定でして……と、苦し紛れの言い訳を必死にして、ごめんなさい! と謝って逃げるように理科室を出たと思う。
先生は一体どういうつもりだったのか
廊下で待ち構えていた友達にも話したら、「A先生、キモッ」と、案の定ドン引きしていた。私も、だよねーと、みんなに合わせて被害者ぶったが、本当は罪悪感で心が押しつぶされそうだった。
おそらくA先生は高校生の私と付き合うつもりはなく、高校卒業を待って交際するつもりだったと思いたい。そもそも真面目であるが故に、なんとかして気持ちに応えてあげなければと思わせてしまったのかもしれない。本当に申し訳ないことをしたと反省している。
ところで、「愛おしい」という言葉を掛けてきた男性は、後にも先にもA先生だけだ。古文も教える先生だったから、言葉のチョイスが古風だったのだろうか。今も愛おしいという言葉を小説や映画などで見聞きするたびに、胸の奥がチクッと痛む。A先生は同窓会にも来ているそうなので、私は出席できなくなってしまった。ただ、そんなA先生にはどうか、どうか幸せな人生を送っていてほしい。
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