英紙が大特集 日本の女性はなぜ「キャリアか家庭か」の選択を迫られるのか?
世界でもトップクラスの近代国家であるはずの日本で、なぜ女性がいまだに「キャリアか家庭か」という選択を迫られるのか――。イギリスの大手新聞社テレグラフ紙は、この疑問に対し、広範な要素から分析した記事を公開しました。
記事では、キャリアウーマンや専業主婦、学生など立場の異なる5人の日本人女性のインタビューを掲載。日本の雑誌編集者の意見や社会的政治的変遷、統計や経済予想などの数値も織り交ぜつつ、様々な切り口から疑問にアプローチしています。
年功序列がもたらす長時間労働「共働きは不可能」
記事に登場したのは、次の方たち。フードライターの佐々木ひろこさん、美術プロデューサーの田辺千香子さん、写真雑誌「IMA」編集者の太田睦子さん、主婦の飯塚久美子さん、それから宮千香子さん、瀬戸山星乃さんという2人の学生です。
テレグラフ紙は、日本女性の社会進出が他の先進国と比べて大幅に遅れている要因のひとつとして、70年代に幼児保育への資金を減らしたことを指摘。これが待機児童問題をもたらし、多くの女性がキャリアを諦めて家庭に入ることを選ばざるをえない状況となっていると説明しました。
また、6歳以下の子どもが父親と接する時間が英国では週に2.5時間あるのに、日本では1時間しかないという調査結果を紹介。年功序列文化によって若手従業員が年長者よりも長く働くことが尊ばれ、昇進は業績以上に「働いた時間」が重視される日本独自の社会的背景を紹介し、「共働きはしばしば不可能である」と指摘しました。
他にも「総合職と一般職」という日本独特の就労制度も、女性の潜在能力を抑圧していると分析しています。
さらに、日本の少子化問題と赤字財政についても言及。女性が子どもを生むことが少子化問題の解決方法と扱われている一方で、財政赤字と経済停滞の打開策として「女性の就労を促そう」としている安倍政権の政策を紹介しました。
少子化の西欧諸国でも「セックス回数は減っていない」のに
記事は日本人のセックスに対する意識の低さにも触れ、「セックスしない症候群」や「バーチャル彼女」の存在に言及し、「西欧諸国でも出生率は低下しているが、セックスの回数が減っているわけではない」と日本の少子化問題の特異性を示しました。
また、日本の政治家の「女性は産む機械」「結婚したらどうだ」といった、女性の働き方や生き方への無関心を示す発言を引用。日本人女性に対する外国人の典型的な印象が「物静かで従順な性格」であると書いた上で、
「(日本人女性は)驚くほど強い。政治家が『産む機械』なんて考えている社会で、自分の生きたいように生きるために、強くあるしかないから」
という東京大学の女子大学院生の言葉を引用しています。
以上のテレグラフ紙の分析は、日本人だと当たり前すぎて意識できないような社会的背景に触れていて、問題の奥深さと様々なアプローチの仕方の可能性を感じさせてくれます。
女性が選択肢を「自分で選べる社会」に
記事では、このままでは2060年までには日本の人口が3割も減少すると書かれています。人口減や経済衰退には、確かに出生率の向上が課題となります。しかし、だからといって女性が自分の人生を犠牲にして、どんどん子どもを産みなさいと社会が強制することは許されるものではないでしょう。
女性が「キャリアか家庭か」という二者択一を社会に制限されるのではなく、自らの生き方を自由に選ぶ権利を守ることで、日本の未来を作っていく道を模索するしかありません。その意味で、この記事はいろんなヒントを与えてくれます。
(参考)Career or family: why Japanese women still have to choose (The Teregraph)
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