女性が働き、男性が家事育児したら「ヒモ」呼ばわり 尾木ママ「日本は母性と父性に囚われすぎ」と語る
今回は、家事も育児も自分から積極的に行う、というお父さんたちが参加していました。子どもと一緒に過ごす時間を増やしたいと、自宅近くの会社に転職した人も。しかし、よく考えると母親が2人いるようなもので、「父親」の実感がなく、「父親らしさ」ってなんだろう、とモヤモヤを抱えているそうです。
また別のお父さんは、育児休暇を1年以上取っていたとき、ママ友に
「お父さんなのに怒らないよね」
「男の人は仕事するのが育児でしょ」
などと言われましたといいます。「エッと驚いて。僕の中では育児は育児、仕事は仕事なんだ、それを一緒にするな!って、(喉まで)出かかりました」と、心を痛めた経験を明かしました。
妻から「父親なんだから叱って!」「男の威厳がない!」と言われる人もいて、やはり、「父親らしさ」に悩んでいました。男性に育児参加を促すはずの女性からも、こうした言葉が出てしまうのです。
男性学を研究する社会学者の田中俊之さんは、戦前まで父親の権威が非常に強かったが、戦後は男女平等になり父親の権威は否定された。だが、どういう父親があるべき姿なのか、明確になったことはないと解説。いまは、「イクメンというイメージが先行していますが、現実の子育て対応はあまり変わっていない」と、イメージと現実のギャップを語りました。
番組では、数年かけて「フルタイムで働く母」、「家事育児をする父」という役割を築いた家族も紹介。素晴らしいご家庭でしたが、お父さんが「ヒモ」と言われたこともあったそうです。尾木ママは、
「日本社会はあまりにも、母性と父性に分けてとらわれすぎ。問題だろうと思います」
と懸念を口にしました。
モデルなき現在、「父親母親あるべき姿に固執する必要なんてない」
しかしお父さんたちは、専門家の言葉に励まされていました。親子問題に詳しい大日向雅美さん(恵泉女学園大学・学長)は、子どもの成長にとって必要な「愛情」は、母性的と呼ばれる「包み込んでくれる愛情」と、父性的と言われる「毅然とした厳しさ」だと語ります。
そこに、「父性・母性という担い手のジェンダーを想像させる言葉を使うことが、混乱のもと」と指摘。「1人の人間が両方持っていることが望ましい、男女で区分けすることは不自然です」とのこと。現代の「父親らしさ」はモデルがなく、
「いまのお父さんたちは、海図なき航海に出ているようなもの。だからこそ、自分らしく作ってほしい」
と父親たちを励ましました。見本なんてないのだから、「自分にとっての父親らしさ」で行けばいいということです。
お父さんたちは肩の荷が下りたような顔で、「やれることを自分らしくやっていけばいいんだなと。好きにやります!」と清々しい笑みを浮かべていました。
ネット上では視聴者から称賛の声が上がり、「父親母親のあるべき姿に固執する必要なんてないんだね」といった感想が出ています。「母親、父親はこうあるべき」というよりも、自分なりの価値観を作っていくことが重要な時代になっているようです。