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「地に足の着いたイノベーションを」新たな価値を創造する日本航空「JALイノベーションプラットフォーム」でCXとEXの最大化を目指す

日本航空株式会社 常務執行役員 デジタルイノベーション本部長の西畑智博さん(同社提供。以下同じ)

日本の航空業界を常にリードしてきた日本航空株式会社(以下、JAL)は、2021年から2025年のグループ中期経営計画においてデジタル・IT戦略を事業戦略として打ち立て、DXの推進とあらゆる体験価値の最大化に向けて、より一層注力する体制を示した。

業界のデジタル変革を牽引するJALグループが取り組む、人財とテクノロジーの融合によるさらなるDXの推進、そして新たな事業の創出に向けた仕組みとは。常務執行役員デジタルイノベーション本部長の西畑智博さんに話を聞いた。(文:千葉郁美)

人財とテクノロジーの融合で新たな価値を創出する

2021年4月に設立されたデジタルイノベーション本部は、デジタル変革によるCX(顧客体験価値)とEX(社員体験価値)の最大化、そしてテクノロジーによる新たな事業創出の実現という大きな目標達成に向け邁進している。

「デジタル変革のミッションステートメントは”人財×テクノロジーで地に足の着いたイノベーションを!”。そして新たな事業創出のミッションステートメントは”新たな事業を創出し、世界中のヒト・モノ・コトの距離を縮め、豊かでサステナブルな社会を実現する”を掲げています。
イノベーションやDXという言葉はバズワード的に扱われてしまいがちですが、JALは決して今だけの話ではなく地に足の着いたイノベーションであること、そして人がいかに価値の高い仕事をしていくか。こういう発想のもとでDXを推進しています。」(西畑さん)

これまでにもJALは、エアラインとして一番重要な予約・発券システムの刷新を実現するなど、業界でも大規模なデジタル変革を実現してきた。時代の変遷に合わせて業務システムを都度刷新していく上に、さらなるDXの推進を模索する仕組みが「JALイノベーションプラットフォーム」だ。

可能性を探る拠点「JALイノベーションラボ」

新たな価値を生み出す「JALイノベーションプラットフォーム」。その拠点として2018年に「JALイノベーションラボ」を天王洲の本社近くに構えた。

運河沿いの倉庫の一階、約500平米という広さがあり、そこにはカスタマージャーニーが再現されている。空港のチェックインカウンターやラウンジ、オープンスペースやキッチンも備える。キャビンモックアップには、リアルな国際線のシートが実際に置いてある。床はフラットになっていて、ロボットや車椅子が走行しやすい仕様だ。

「空港の現場は制約が厳しいため、機材などを持ち込んで何かを試しにやってみたくても容易ではありません。そのため、空港や飛行機の内部を再現したラボで、現場をイメージした開発をしているというわけです」(西畑さん)

JALイノベーションラボには、社内の幅広い領域の社員が「ラボ会員」として160名以上在籍している。整備士もいれば運航乗務員、客室乗務員など、様々な知見を持つメンバーが集まり、アイデアソンや勉強会などを実施している。

また、国内外のスタートアップ企業に対して投資を行う「JALイノベーションファンド」を立ち上げ、社外とのパートナーシップ形成にも尽力して新たな事業の創造につなげている。

「昨今では我々のようなラボを構える企業も多く、そういった企業とアライアンスを組んで新たなものを生み出そうとオープンイノベーションを展開しています。現在、通信会社やコンサル会社、ベンダー、事業会社など幅広い業界の企業12社と手を組み、様々なソリューションの創出を実現しているところです。」(西畑さん)

CXとEXを最大化するソリューションの開発に寄与

実際にJALイノベーションラボのプロジェクトから多様なソリューションが生まれている。空港内で人の代わりに案内を行うアバターロボットの「JET」が一例だ。

遠隔操作でロボットを操縦し、感情表現や音声通話を行うことができる「JET」は、様々な理由で現場の業務を離れた社員が、遠隔で業務に携われるといった働き方改革につながるほか、コロナ禍における非接触・非対面のニーズにも応えている。

そのほかにも自動チェックイン機のタッチパネル非接触化や、JALのラウンジに顔認証で入場できる、文字通りの「顔パス」が実現するなど、カスタマージャーニーに沿った形で様々な展開を実現した。しかも、こうしたソリューション開発の取り組みは3ヶ月単位という短い期間で生み出されているという。

「社内外から人が集まりアイデアを出し、創ってみる、試してみる。そしてまたアイデアを出し…というこのループを3ヶ月タームで回しているという、他に類を見ないスピード感も特徴の一つと言えるでしょう。
また、こうした先進的な取り組みには社内調整という障壁がつきものですが、ラボには社長、会長をはじめとした経営陣も足を運び、応援メッセージを残してくれています。社内を巻き込んでイノベーションを起こすという風土醸成ができていると思います。」(西畑さん)

新たな事業領域に挑戦へ。社内ビジネスコンテスト「創造の翼」

社内からイノベーションを起こそうという取り組みの一つには、新規事業の創出が期待される社内のビジネスコンテスト「創造の翼」がある。この取り組みは2017年から現在に至るまで年に1回実施され、コンテストの優勝者はデジタルイノベーション本部に異動して事業の実現に取り組むこととなる。

実際に、第一回目の2017年に優勝したアイデアは事業化を実現した。

飛行機のパイロットが持つノウハウの中でも、認知力や判断力、コミュニケーション能力といった「ノンテクニカル」スキルに着目し、ドローンの操縦士育成に生かすというアイデアは、座学カリキュラム講座「JAL Air Mobility Operation Academy(JAMOA、ジャモア)」として2020年10月に事業化を果たした。

「次世代エアモビリティ事業領域として注力しているドローンや空飛ぶクルマの事業化はもうすぐそこまできています。開発を進める中で様々な課題がありますが、空の安全を守ることが当然重要になりますし、それはJALでなければできない領域だと思っています。そんな中でJAMOAが立ち上がり、JALの運航乗務員たちが先生になってプログラムを実施しています。新たな事業につながるアイデアが、重要な事業の一つのパーツを担ってくれています。」(西畑さん)

JALのデジタル変革、そして新たな事業の創出を推し進める上で重要な位置づけとなっているJALイノベーションプラットフォーム。ここから今後も生み出されるであろう新たな価値は、世の中にどのようなインパクトを与えてくれるのだろうか。期待が高まる。

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