吉野家ホールディングスは4月19日、「人権・ジェンダー問題の観点から到底許容することの出来ない職務上著しく不適任な言動があった」として、同社の解任を発表。「本日以降、当社と同氏との契約関係は一切ございません」と絶縁状を公表した。
そんな吉野家ホールディングスだが、公式サイトの「グループ経営理念」には、こんな一節があった。
『健全性』
原理原則に基づいた本音での議論をすることで、透明性の高い自由闊達な社風を醸成します。
また、社会倫理やコンプライアンスに背くような行為を許さず、健全であることを目指し続けます。
https://www.yoshinoya-holdings.com/company/group/values.html
伊東氏は、どうやら「本音での議論」は実践していたと思われるが、他のところはすっかり抜け落ちていたようだ。
今回の発言については、さすがの吉野家も「人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません」と釈明。ただ、ここまでむちゃくちゃな問題発言は昨今、記憶にないレベル。いくら解任したといっても、このような発言をする人物を重用していたイメージは、なかなか薄れないだろう。
吉野家は1980年に、倒産したことがある。急激な店舗拡大と、味や顧客サービスの悪化が倒産の原因だったと、かつての報道では、こんな風に指摘されている。
「値段を据え置くために、材料費をさらに圧縮しようと、肉はすじ肉、タレは粉末と合理化。これが品質悪化につながり、店の冷暖房もないサービスの悪さも目立ってきた」(読売新聞・1987年2月25日付朝刊)
今回の発言も、倒産前の経営戦略も「顧客をバカにした態度」という意味では共通している。かつての倒産後、吉野家が経営を立て直し、債務を全額弁済するには7年弱かかった。吉野家は今回失った信頼を、どうやって回復していくのだろうか。