「フジロックに行く人みんな地獄に落ちてほしい」匿名の叫び、地元民の受け止めは? | キャリコネニュース
おかげさまで10周年 メルマガ読者数
65万人以上!

「フジロックに行く人みんな地獄に落ちてほしい」匿名の叫び、地元民の受け止めは?

匿名ダイアリーキャプチャ画像

ネットで話題に

8月20日から22日に新潟県湯沢町で開催された、日本最大規模のロックイベント「フジロックフェスティバル」(フジロック)。デルタ株が全国で猛威を振るい、各地で緊急事態宣言が相次ぐ中とあって、開催には疑問が投げかけられ、直前に「出演取りやめ表明」が相次ぐなど波乱も起きた。

そんな中、開催前日に「フジロックに行く人みんな地獄に落ちてほしい」という匿名投稿がネットで話題を呼んだ。投稿したのは「湯沢町ではないが、新潟県内の若者の一人」と名乗る人物だ。「はてな匿名ダイアリー」に投稿されたこの叫びを、地元民はどう思うのだろうか。現地で話を聞いた。(取材・文:箕輪 健伸)

投稿の中身は?

まず話題を呼んだ投稿の中身をざっと紹介する。

新潟県内在住という筆者は、この1年半ほど、飲み会や県外への遠出、ライブ、舞台鑑賞、帰省した友人と会うことなど「今までの楽しかったこと、生き甲斐のような気持ちでいたもののほとんどを我慢して生活していた」という。

それにもかかわらず今回、フジロックが開催され大勢がやってくることについて、筆者は「私が我慢してきたことを踏み躙るように県外から客がくる。私だってこんな世でなければ行きたい。どうして、県内の人間が行くことを我慢しているのに県外の阿呆たちがそれを楽しむのだろうか。許せない気持ちしかない」と綴った。

投稿は「フジロックには来ないでください。来る人間は全員地獄に落ちてください」と締めくくられている。

この叫びについて、現地の人に反応を聞いた。

「ストレスでいっぱいいっぱい」

「気持ちは本当によくわかる」と語るのは、フジロックの開催地・湯沢町の30代男性。サラリーマンとして近隣の都市で働いているこの男性は8月19日夜、次のように話してくれた。

「私もこの1年半の間、楽しみが、ことごとくなくなりました。ストレスでいっぱいいっぱいですが、それでも、職場や地域に迷惑をかけてはいけないとほとんどの時間を家で家族と過ごしています。それなのに、オリンピックはやったし、フジロックもやるという。何より、今は東京が危機的状態なんじゃないですか? フジロックの混雑のなかで感染して、東京などに帰ったときに発症したらどうするんでしょうか? 自分には理解できません。フジロックの期間は怖いので、コンビニにも行かないでおこうと思っています」

「もしクラスターが発生したら」

開催地に近い病院で看護師として働く20代女性にも8月20日の開催初日に話を聞けた。

女性は「私もいつもはフジロックに参加してきました。参加する人が楽しみな気持ちはとても理解できます。でも、今ではないでしょうという気持ちです。この投稿を書いた人と同じ心境ですね。もし、フジロックをきっかけにクラスターが発生したらどうするんでしょうか」と危惧していた。

「私が働いている病院ではないのですが、近隣の病院で院内感染によるクラスターが発生して、地元は大変な騒ぎになりました。もし大規模なクラスターが発生したら、もともと医療資源の乏しいこの地域の医療は簡単に崩壊してしまいます」

開催地・湯沢町の周辺地域では、この1年半の間に何回かクラスターが発生した。院内で多数の感染者を出したために、休診を余儀なくされた病院もあるという。

「私たちも食べていかねければ」

一方、フジロックの開催を心待ちにしていた人もいる。「この記事に書いた人の気持ちもよくわかります。だけど、私たちも食べていかねければいけない。怖いけれど、お客さんに来てもらえるのはうれしい」と語るのは、開催地近郊で旅館業を営む40代男性。開催初日、8月20日の日中、男性はこう語っていた。

「フジロックを含めて夏休み期間中は、毎年、書き入れ時でした。しかし、コロナ禍で去年の夏は、常連を含め、ほとんどお客さんがキャンセル。フジロックも中止になってしまいましたし、赤字額はかなりの額に上ります。今年もフジロックは中止かなと諦めていたところ、やるという。おかげで期間中は満室になりました。コロナの感染は確かに怖いけれど、正直助かります。感染対策を万全にしてお客さんを迎え入れたいと思います」

飲食店も同様だ。開催地からほど近い場所にある居酒屋店主(50代男性)に、開催期間中の8月21日に話を聞くと、次のような感想だった。

「こういう記事を書く人の気持ちはわかります。私だって、こんな商売をしていなければ開催に反対したかもしれません。でも、この1年ちょっと、スキー客も温泉客も激減。東京からお客さんに来てもらえないと私たちは食べていけません。コロナのおかげでこの1年ほどの売り上げは例年の20~30%にとどまっています。現金が底をつくと商売ができませんので、たとえ数日であっても満員になってくれればと期待しています。実際に昨日は久しぶりに満席になりましたしね」

開催歓迎派ですら「若者の気持ちはわかる」と話していたのが印象的だった。やはりこの状況下での開催には、誰しも思うところがあるのだろう。

なお、この投稿には後日、「はやく誰もが楽しいイベントに純粋にはしゃげる世界になるといいね」と追記があった。本当にその通り。どんな立場であっても、この点には心から同意できそうだ。

【PR】注目情報

関連記事

次世代バナー
次世代バナー

アーカイブ