フェスが終わった29日夜、「ネットを見ていて、なんじゃこりゃと思った」と打ち明けた大村知事。イベント開催について、県の担当部局からは事前に知らされていなかったという。
大村知事は「ネット等での投稿画像によれば、ステージ前では適切なソーシャルディスタンスは、どうも確保できていなかったのではないかと疑われる。お酒についても、発注キャンセルできるものはキャンセルしたが、一部提供があったもようだ」と、県側の現状認識を説明した。
県によると、フェスの会場となったのは、愛知国際会議展示場株式会社が運営権(15年間)を買いとって運営している「中部国際空港島のアイチスカイエキスポ」。県は8月に入ってからも、同社や主催者と折衝を繰り返し、8月12日、24日、26日、27日と4回にわたって感染防止策の徹底を呼びかけていたという。
まず8月12日には、県内の「まん延防止等重点措置」が始まったことを受けて、これ以上のチケット販売の停止、基本的な感染対策の徹底、ステージエリアの密の回避、大声での歓声の禁止、酒類提供の自粛を要請した。
また、8月24日に県は「ステージ前の運営改善を確認し、同エリアを柵で区切って中に入れる人数を制限する等の回答が(主催者側から)あった」としている。主催者側はこの時点でもまだ酒の提供をしたいと要望していたが、県としては「愛知県の感染状況が拡大傾向であることを踏まえて、お酒の提供は自粛を強く求めると伝達した」という。
さらに、8月26日にも「(1)緊急事態宣言に準じた催事のやり方、(2)基本的な感染防止対策の徹底、(3)十分な人と人との距離・最低1メートルの確保、(4)ステージエリアの密の回避、(5)酒類提供の自粛」を連絡。
そして、開催前日の8月27日にも「(1)愛知県では新規感染者数2000人を超える深刻な状況だ。(2)県に対しても、県会議員さんから、憂慮する声が届いている。(3)地元の病院はコロナ感染者の受け入れに追われて大変厳しい状況だ。(4)こうした状況を重く受け止めて、感染対策を徹底して。(5)酒類提供を自粛してもらう」と、再度伝えていたそうだ。
それなのに、今回の事態となった。SNS上で動画・写真で会場の「密」状態が拡散され、県は酒類の提供があったことを確認したという。
大村知事は何度も首をかしげるなど、不快感をあらわにしながら、「こういう形の、横紙破りのようなことをやられると、一生懸命、真面目に取り組んでおられる方々の足を引っ張る形になりますし、我々としても極めて遺憾だということであります」と述べた。
「音楽やコンサートは必要」だからこそ……
一方で、記者から「音楽フェスは、原則やめてというメッセージは出さないのか?」と問われると、大村知事は「それは違う」として、次のように理由を述べた。
「それをやると、真面目に一生懸命、感染防止対策をやって、音楽業界・関係のみなさんの仕事も一生懸命支えたい、両立させてやっていきたいという人を、潰しちゃうことになりますよね。叩いちゃうことになりますよね。それは、私は違うのではないかと思います。こういう約束を守っていただけない方のために、一生懸命守っている方が被害を受ける、迷惑を被るということは、これは違うと思います」
「極端な話、もう日本には音楽、コンサートといった文化・芸術・アーティストは要らないと、なくていいというのであれば別ですが、そんなことは誰も思っていない。どうやって両立していくのかということですよね。ですから、感染防止対策をしっかりしたうえで、厳しい状況を乗り越えていこうと申し上げたい」
「そういう中で、『自分の会社さえ儲かりゃいいんだ』『そんなの、知ったことか』と『県にはこう言っておくけど、実際の客がどうするかは知らんわ、そんなもん』という行動を取られた方は、極めて遺憾だ」
大村知事は「事実関係をさらに確認したうえで、厳正に対処したいと思っております」と述べていた。