「人材のミスマッチ率」が世界最悪の日本 企業が大学教育を軽視し、高スキル人材を厚遇しないから?
外資系人材紹介会社のヘイズ・ジャパンは11月12日、「世界31カ国における人材の需給効率調査」の結果を公表した。日本は「人材ミスマッチ率」が2年連続で上昇し、10点中10点。世界的に見ても「最も人材が探しにくい国」とされている。
「人材のミスマッチ率」が低いほど、企業は自社に必要なスキルを持った労働者を容易に見つけることができる。逆にこれが高い日本は、「空いているポジションと求職者を適合させるうえで深刻な問題に直面している」(ヘイズ・ジャパン)ということになる。
「企業が求めるスキルと求職者のスキルに大きな乖離」
同調査は2012年から、英ヘイズと英オックスフォード・エコノミクスが共同で実施。「労働市場の柔軟性」や「全体的な賃金圧力」「教育の柔軟性」など7つの項目を10段階で指標化し、人材の需要と供給の状況を評価・分析したものだという。
アジア・太平洋地域の他の国の「人材ミスマッチ率」は、経済が好調なオーストラリアが4.2と最も低く、比較的高いシンガポールでも6.0にとどまっており、日本の10.0は「最悪レベル」だ。この点について調査元では、次のように分析している。
「日本では、企業が求めているスキルと、実際に求職者が持っているスキルが大きく乖離している事が浮き彫りになった」
なぜこのようなことが起こるのか。ヘイズのレポートでは具体的な分析を行っていないが、考えられる理由のひとつは、「企業が要求する求職者レベルが高すぎる」ことだ。誰にでも務まるポストなら、どんな求職者でもマッチする。
しかし企業が抱える課題が深刻で、必要なスキルが高ければ、それだけマッチする人材が少なくなり、ミスマッチ率も高くなる。例えば少子化などで内需が縮小するなかで、海外展開を目指そうにも、英語をはじめとする外国語ができる人が少なかったり、海外勤務を志望しない人が多かったりすれば、ミスマッチ率は高くなってしまう。
「教育の柔軟性」が高いドイツは、人材ミスマッチ率が低い
人材ミスマッチ率の高さは、「教育の柔軟度」とも関係がありそうだ。教育制度が労働市場のニーズに対応できているかを示す指標だが、オーストラリアの5.1やニュージーランドの4.7と比べても、日本は3.0とかなり低い数値だ。
教育の柔軟性が6.2と高いドイツでは、人材ミスマッチ率が3.3と低いことを考え合わせても、日本の教育が労働者のスキル確保につながっていないために、ミスマッチ率が高くなっている可能性がある。
その一方で、「専門性の高い業界における賃金圧力」は2.5とかなり低い。高い専門性が必要とされる業界における賃金上昇の高さを示す指標だが、オーストラリアでは7.2、ドイツやニュージーランドでは10.0にも達する。
要するに日本では専門性の高い業界においても、人材を比較的安く雇えるということになる。高い教育を受けて高い専門性を身につけたとしても、高給で待遇されないとすれば、優秀な人材も集まらない。間接的に「人材ミスマッチ率」の高止まりにも影響しているのかもしれない。
ネットも憤慨「日本はスキルじゃなくコネで仕事する」
これらを総合して考えると、人材のミスマッチ率の高さは、企業が求める求職者のレベルが高すぎるというよりも、ハイレベルの仕事にも厚遇を保障しようとしないため、高スキルの人材が働きたがらないという側面もあるのではないか。
ヘイズのレポートを受けて、日本企業では高いスキルが評価されず、協調性など別の要素が重視されるのが原因だという声がネットにもあがっている。
「日本はスキルや能力で仕事する訳じゃない。コネで仕事するんだ」
「人材発掘とか活用が下手過ぎるからな。出る杭はすぐに地下に引っ込めてぶっ潰すから」
大学教育に疑問を持つ人も多い。学部ごとに専門はあるものの、卒業時に業務に活かせる専門性が身につかない場合も多い。仮に専門性が身についていたとしても、企業はそのスキルを活かす職に配属させると限らない。「これは企業にも学生にも不幸。大学の勉強と実務は別って考えてるのは日本の特徴」と嘆く声もあった。
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