「最大200万円」「総額の半分を助成」――人材獲得のため「奨学金肩代わり」制度を設ける企業や自治体が続々
ブライダル事業を展開するノバレーゼは、2012年から「奨学金返済支援制度」を設けている。奨学金を借りている正社員の勤続年数が5年と10年になった際、未返還分に対しそれぞれ100万円を上限に支給するというもので、2回あわせて最大200万円となる。
導入のきっかけは、社員の約3割が奨学金を受給していることが分かったこと。自身も奨学金を受けていた当時5年目の社員が、「新制度導入で優秀な学生の採用確保と社員のモチベーションアップにつながる」と役員会に提案し、実現に至ったのだという。
「奨学金の負担に困っている社員がいるなら、その問題をなんとかクリアにしたいなという思いもありました」(同社広報)
制度の導入が決まったことで、社員からは「嬉しい」「会社が社員のことを見てくれていることがありがたい」という声があがったそうだ。制度については、就職活動の説明会で必ず触れるようにしているという。
「この制度を含め、『人を大切にしている』と魅力を感じて入社された方もいます」(同)
2012年7月1日を勤続年数の開始基準日としているので、初支給となるのは2017年。区切りで支給する形にしたのは、「ある程度会社に対して社員が貢献し、そのタイミングで会社も還元する」という考えからだそうだ。現在、正社員は627人。そのうち48人が対象になる見込みだ。
ノバレーゼ以外にも、メガネの製造販売を手掛けるオンデーズや、WEB制作会社のGOSPA、 ソフトウェア開発を行うクロスキャット(2017年入社から)でも奨学金を肩代わりする制度が導入されている。
地方自治体もUIターン就職を後押しするべく肩代わり、鳥取県は180人募集
また、奨学金を肩代わりする動きは民間企業だけでなく、地方自治体でも進んでいる。総務省も奨学金を活用し、大学生が地方で就職して定着することを促している。
富山県の「富山県奨学金返還助成制度」は、理工系の大学院生・薬学部生のUIターン就職を図るために創設。同県に定住し、制度に賛同する県内の企業で10年間就業した場合、大学院の学費、または薬学部5・6年分の奨学金を全額肩代わりする。対象人数は30人程度。山口県の「山口県高度産業人材奨学金返還補助制度」も理系学生20人を対象に同じような助成を行っている。
理系学生で対象人数も少ないとなると、壁が高く感じそうだが、もっと間口を広げている自治体もある。鳥取県の「鳥取県未来人材育成奨学金支援助成金」は、県に就職を希望する学生や35歳未満の卒業生180人を対象に無利子の奨学金の場合は返還総額の2分の1、有利子の場合は4分の1を助成する。
業種は「製造業、情報通信業、薬剤師の職域、建設業、建設コンサルタント業、旅館・ホテル業」とある程度絞られているものの、学部の制限などはない。県の就業支援課の担当者は「この規模で助成を行っているのは他にないのでは」と話す。
同助成金制度は昨年度から始まり、昨年の認定者数は約100人。認定者には就職後、交付申請等を経てから助成金の支給が開始する。昨年の認定者からは「鳥取に帰ることは検討していたものの、今回の助成が後押しになった」「負担を助成してもらえるのがありがたい。鳥取のために頑張る」といった声が出ていたという。
現在、2015年度の認定対象者の募集を行っており、20人程度の応募が来ているという。8年間継続して勤務することが条件になっているが、奨学金の返還に悩んでいる人は一考の価値があるかもしれない。
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