「ブラック企業に勤める人はブラックだと認識していない」に共感の声が相次ぐ 「外から見ないとわからない」
勤務先の会社を批判されれば、いい気はしない。批判してきたのが、たった1か月で会社を辞めた新入社員ならなおさらだ。しかし、当の会社がブラック企業だとしたら話は違ってくる。
5月7日、はてな匿名ダイアリーに投稿された「2chで我が社をブラック扱いした君へ」が話題となっている。
投稿主の勤め先企業が、ある日「就職板のブラック企業スレ」に書き込まれたのだという。伏せ字にはなっていたものの、それほど大きくない会社だった上、書き込まれた時期に辞めた人が1人しかいなかった。そのため1か月で辞めた新入社員が書いたのだと目星が付いたという。投稿主は、その新入社員に向かって、「でもさ、ちょっと言わせてくれよ」と語りかける。
「うちの社長と社員の何を知ってるって言うんだい?」
「電話の取り次ぎぐらいしかできずに1ヶ月で辞めていった君がうちの業務の何を知っているって言うんだい?」
「うちの社長と社員の何を知ってるって言うんだい?」
たしかに、会社の全容を知るのにはある程度の時間が必要ではある。たった1か月で辞めた新入社員には、批判する資格などないと言いたいのだろう。また新入社員は「社長がワンマン」だと批判していたようだが、投稿主からすれば「あんなのかわいいほう」だという。取引先の中小企業の社長の中には、もっとひどいワンマン経営者もいる。勤め続ければ、そうしたこともわかるはずだと投稿主は主張する。
また投稿主自身は、「自分の会社はブラックだと思っていない」という。大変なこともあるが、おもしろいところもあり、「やりがいと誇り」を持って働いていると書いている。だからこそ、たった1か月で辞めた新入社員に批判されるのは腑に落ちなかったのだろう。
「ブラックに限らず、会社移らないとなかなか相対化できないよね」
以上が、投稿の前半部分だが、この投稿には後半部分がある。実は、新入社員を責める前半部分については、「うん十年ほど前」に書いていたという。現在、その前半部分を振り返って書いたのが投稿の後半部分だ。
投稿主は、前半部分の投稿を書いた数年後に、転職したという。そうした経験を経た今、新入社員の書き込みにも一理あると考えるようになったそうだ。
「今振り返ってみると労働環境は悪く、ブラックと言われても仕方の無い部分があるかと思っている」
その上で「問題なのは、ブラック企業で頑張って働いている人が、自分の会社をブラックと認識していないかもしれない、ということだ」と語る。投稿主は、他の職場で働いたことがなく、「比較対象」がなかったからではないかと指摘している
この投稿は大きな反響を呼び、「ブラックに限らず、会社移らないとなかなか相対化できないよね」「外から見てみないと自分たちの状況は見えないということなんだろう」といった共感の声が相次いだ。他の職場を経験して初めて、元の職場を冷静に判断できるようになるのだろう。
勤め始めたときはおかしいと思っていても、勤めるうちに慣れてしまうということもある。サービス残業が多くの職場で常態化しているのも、多くの人がそれを当たり前として受け止めてしまっているからだろう。過酷な長時間労働が続くと、会社が生活の中心になり、外部の情報も入ってこなくなる。
ブラック企業に勤めながらも、ブラックだと認識できないのは危険だ。周囲の人に話を聞いたり、辞めた人の意見に真摯に耳を傾け、客観的な認識を持ちたい。