郡山市長の「たばこは薬物」発言が波紋呼ぶ 禁煙学会は「当然の発言」と擁護
福島県郡山市の品川萬里(まさと)市長が先月4日、「たばこは嗜好(しこう)品ではなく薬物だ」と発言し、波紋が広がっている。市議会議員が市長の発言を批判し、たばこ農家や愛煙家への謝罪を要求。日本たばこ産業(JT)郡山支店ら10団体は7月10日、発言の撤回を求める意見書を提出した。
意見書では、郡山市内に葉たばこ農家が46戸(面積31ヘクタール)、たばこ販売店が520店あることから、たばこで生計を立てる人々への影響を懸念。さらに”薬物”という表現が非合法の麻薬等を連想させることから、
「たばこは合法な商品であり、かつ多くの方々から愛される嗜好品であることは間違いないところです。そのたばこを生業として生計を立てている多くの方々とその家族から、この発言は心外であるとの声が多数聞かれるところです」
と市長の発言を批判している。
日本禁煙学会「たばこが薬物だというのは当然のこと。嗜癖品と言うべき」
しかし市長の発言を擁護する声も多い。ネットでは「ニコチンは依存性薬物ですよ」「実際薬物でしょう?百害あって一利なし」といった意見が噴出。”薬物”という表現は聞こえが悪いが、依存性があって健康にも悪いため、薬物に他ならないと考える人が多いようだ。
日本禁煙学会も同様の立場だ。同会の広報担当者は、キャリコネニュースに対して、「たばこが薬物だというのは当然のことだ」と話した。
「世界保健機関(WHO)は、たばこが依存性のある薬物であると認めており、ドラッグ等と一緒に『サブスタンス』と称しています。たばこ会社は『嗜好品』と言いますが、『嗜癖品』と言うべきです。やめることができず、有害なものだからです」
同会は6月26日、「タバコは薬物である」という文書を公式サイトに掲載している。喫煙による死亡者数は年間12~13万人、受動喫煙による死亡者数は年間6800人に上り、「タバコは覚醒剤やアルコールよりも強い依存性をもたらす『薬物』である」とした。
議会紛糾「生産農家さん、嗜好品として吸っている方へ一言お詫びを頂きたい」
品川市長の発言に対しては、郡山市議会の定例会で複数の市議から批判が出ていた。佐藤栄作議員は6月19日、
「郡山市にはたばこ生産農家もいて、それで生計を立ててますよね。それをあたかも覚せい剤と同じような『薬物』というのは、中核市のトップリーダーとしていかがなものか」
と市長を批判。川前光徳議員からも「合法的に認められたたばこを生産農家さんを始め、生産されている方、商売として扱っている方、嗜好品として吸っている方がいる。その方々に対してこんな侮辱はない。この方々へ一言お詫びを頂きたい」と謝罪を求める声が上がっていた。
しかし品川市長は「医師と面談中で(中略)医学的所見に基づいてこのような発言をしたものでございます」と説明し、謝罪には応じなかった。たばこを覚せい剤のような”薬物”と同一視したのではなく、医学的な観点から”薬物”と述べたのだという。