「銀行離れ」の就活生に元銀行マンがあえてオススメ 「人気ないときほど行ってみるのもいいかも」「フィンテックと親和性が良い」
就職先として学生に不動の人気を誇ってきた「銀行」。だが、いまその地位が大きく揺らいでいる。マイナビなど主な就職情報サイトで「人気企業上位10位以内」に入る数が減少。「就職したくない企業ランキング」(HR総研調べ)でも文系学生の1位が「メガバンク/信託銀行」と、かなり敬遠されている。
9月11日放送の「モーニングcross」(TOKYO MX)では、こうした就活生の動向について、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)出身の作家、江上剛氏(64歳)が言及。危機感を語った。いまの銀行を取り巻く厳しい環境を解説しつつ、「やはり金融の人材は大事」として、学生に銀行への就職検討を呼び掛けていた。(文:okei)
統廃合ばかりでモチベーションがドンと下がっていく
銀行人気の下落といっても、3大メガバンクは2017年の秋から相次いで「人員削減や店舗の統廃合を進める」と発表しているのだから、当然の結果ともいえる。江上氏は、銀行離れの理由として、
「フィンテック(ファイナンス・テクノロジー)で新しい金融の形が次々に登場し、リストラ不安が高まっている」
「今まで銀行人気を支えてきた『社会的役割(中小企業を支えるなど)』や、様々な『スキル・資格の習得』、『給与の高水準』などの魅力が、相対的に失われてきた」
ということを挙げた。
ビル・ゲイツは1994年に「将来、銀行は必要なくなる」と発言していたという。フィンテックで銀行が持っていた機能、「融資・為替・決済・預金」などが、振興の企業(コンビニ、メルカリ、アイペイなど)によって今やスマホ1台で済む時代となった。
さらに大きな悩みは、経営統合が相次ぎ「従業員のモチベーションがドンと下がった」ことだという。地方銀行は地方創生の要としてならなくてはならないが、合併・統合すると、金融庁からその効果を出せと言われ、従業員のリストラと店舗の統廃合をしなければいけなくなる。
もともと駅前に銀行が多すぎたという話もあるが、東京なら銀行ストリートがファッションストリートなっても、地方はその後空っぽのビルが残される懸念がある。
ある地銀の頭取からは、「大きなメガバンクが何万人リストラなどと言うため、地方も銀行に入ってくれる人(学生)が少なくなった」との嘆きも聞かれるという。メガバンクのリストラ報道で、地方銀行の採用も煽りを受けているというのだ。
「店舗も従業員もリストラしないよ、ぐらいのことをもっと言った方がプラスになる」
しかし江上氏は、「確かに厳しい状況はあるが、僕も銀行に入っていなかったら作家になっていない」として、「フィンテックと銀行は親和性が高いわけです。だから銀行で学んでいることも無駄にはならない」と持論を語った。
司会の堀潤さんも、「メディアと同じ」と同意する。「ネットメディアもたくさん出てきたけど、蓋を開けてみると大手テレビ局や新聞出身の編集長・職員と、新興のIT技術が合わさって(運営)している」と考察。確かに、IT技術だけでなくその分野の実務経験によって、より有効な開発や運営が可能になるかもしれない。その意味で、実際に金融の仕組みを経験・勉強しておくことは無駄ではないということだ。
江上氏は、地方の銀行に入ることは社会的な意義もあるとして、
「頭取や経営者は、『銀行はどんな役割を持っているか』というモチベーションを上げるほうがいい」
「店舗も従業員もリストラしないよ、ぐらいのことをもっと言った方がプラスになる」
と力説。堀さんも、「金融の知識をここにくればしっかり学べるから」と補足している。
一方で、「ノルマばかりかけるからスルガ銀行みたいになっちゃう」と、ずさん融資が記憶に新しい地銀の厳しい状況を憂えた江上氏。
「若い人も、自分の将来なのでよく考える必要があるけれども、銀行も人気のないときほど行ってみるっていうのもいいかもしれない」
と、笑顔で提案していた。しかし銀行を踏み台にするのか共倒れするのか、かなりの見極めを求められるところだ。笑い事ではない気がした。