ユニクロの柳井会長兼社長の莫大な資産 「役員報酬2億4000万円」「総資産2兆円でハワイに別荘とゴルフ場を所有」
今や世界的なファストファッションブランドとなった「ユニクロ」を運営するファーストリテイリング。同社を率いるのは代表取締役会長兼社長の柳井正氏(69)だ。莫大な資産家としても知られているが、その背景にある同社の業績やビジネスモデルはどのようなものなのか。
柳井氏は、家業である山口の衣料小売店を30代で継いでから、安価でカジュアルな服を扱う「ユニクロ」を立ち上げ、巨大なファッション企業に押し上げた。今回は、柳井氏の資産の理由について情報を整理してみよう。
渋谷に2600坪の大邸宅、ハワイに別荘とゴルフ場を所有
米経済誌「フォーブス」の2018年版長者番付によると、柳井氏の総資産は2兆円あまり。世界で55位、国内ではソフトバンクの孫正義社長に次ぐ2位の大富豪だ。本社を東京に移してからは渋谷に居を構え、敷地2600坪の自宅はテニスコートとゴルフ練習場付きの大豪邸。ハワイのマウイ島には別荘と現地のゴルフ場を所有している。
これらの資産を作り上げたのは、もちろんファーストリテイリングのビジネスだ。売上高は2017年8月期までの5期間で約1.6倍に増え、1.8兆円を超えている。店舗数は、この5年で約1.3倍の3,294店舗に増加。中でも中国市場の成長はめざましく、ユニクロブランドだけでも330店舗、約2.5倍も増加している。
自社で強化しているEC(ネット通販)も成長中だ。2017年8月期の売上構成比は全体の6%だが、今後の成長は確実とみられる。
営業利益および経常利益も好調で、2015年8月期と2017年8月期で最高益を更新した。減益となっている期も、店舗展開やEC強化のための先行投資や、急速な円高が要因であり、業績が右肩上がりであることは間違いない。
自社デザインで海外製造、低価格で高品質のビジネスモデル
ファーストリテイリングの売上高営業利益率は10%前後。日本の小売業平均の2%を大きく上回っている。その理由は、同社のビジネスが企画から生産、販売までを一貫して行う「SPA(製販統合)モデル」にある。自社でデザインを行い、提携先の海外工場で生産を委託し、完成品を輸入後、店舗やネットで販売している。そのため中間マージンが発生しにくく、低価格で高品質でありながら利益が出るモデルが作れているのだ。
自社独自のヒット商品が生まれれば利益は大きくなるし、売れ行きなどを細かに分析した情報があるので、商品開発やマーケティングを機動的に行うこともできる。
同社の事業は「国内ユニクロ事業」(5期平均営業利益率14%)、「海外ユニクロ事業」(同7%)、「グローバルブランド事業」(同4%)の3つのセグメントで構成されている。現時点で利益率が最も高いのは国内ユニクロ事業だが、2015年8月期以降に国内の営業利益が頭打ちする中、海外ユニクロ事業の営業利益が増加して会社を支えている。
同社はユニクロに依存しないためにも、GUブランドの成長や、M&Aで買収したセオリーやコントワ・デ・コトニエ、プリンセスタム・タム、Jブランド等の海外ブランドの店舗拡大を図っている。2018年8月期の決算は、前期に続く最高益を達成した。
「役員報酬2億4000万円」は、柳井氏の1人分
ファーストリテイリングの常勤取締役は長く柳井氏のみで他5名は社外取締役だ。2017年8月期の有価証券報告書には、取締役1名の報酬が2億4000万円と記載されており、すべて柳井氏の年間報酬となっている。
柳井氏は、同社株の21.67%を保有する筆頭株主で、同じく大株主である有限会社Fight&Stepや有限会社MASTERMINDも、柳井家の資産管理会社だ。
株式の4.51%を保有する柳井一海氏は柳井氏の長男で、次男の柳井康治氏も同じく4.51%を保有している。信託銀行が2行、信託口として大株主に名を連ねているが、大半が柳井家の株式と見られ、柳井家が過半数を握る株主構成となっている。
1994年7月に広島証券取引所(当時)に上場したファーストリテイリングだが、上場時の時価総額は1,077億円。2018年8月14日時点の時価総額5兆1403億円と比べると、約48倍に成長している。
同社の配当は年間350円と多くはないが、柳井氏個人だけでも同社株を約2300万株保有しており、年80億円を超える配当を受け取っている計算になる。
ただし上場会社オーナーの場合、配当には総合課税されるので最高税率の55%を適用され、44億円もの税金を支払っている。また、資産管理会社で約35%の同社株を保有しているとすると、上記とは別に年131億円の配当を受け取っている計算になる。
社員の平均年収は4年で82万円増加
ここ数期、ファーストリテイリングは従業員を増やしており、2018年7月末の従業員数は4万4424人にのぼる。年間平均給与は2013年度の709万円から、2017年度には791万円にまで大幅に増加している。
ただし、このうち正社員数は1166人と非常に少なく、ほとんどが準社員やアルバイトなどの非正規労働者なのが特徴だ。正社員1人当たりの売上高は約16億円、営業利益は約2億円だが、準社員およびアルバイトを含めると売上高4300万円、営業利益400万円に下がる。
莫大な資産を築く柳井氏だが、実はお酒が飲めず、基本的に夕食は奥様の手料理を食べているそう。過去には一度社長を退任した時期もあったが、再度社長に復帰して業容拡大に努めている。この経営力が、自身の報酬として返ってきているといえる。
気になるのは、今後の後継者問題だ。柳井氏はこれまで息子たちには会社を継がせないと明言してきたが、10月11日、グループ執行役員に名を連ねている長男・一海氏と次男・康治氏を、11月29日付けで取締役に昇格させる人事を発表している。しかし世襲ではないことも改めて強調しており、今後どうなるかが注目される。
(この記事はTENSHOCKに掲載されたもの再構成したものです)