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埋もれた資源を掘り起こせ! 富士通が開発した「特許技術」を中小企業が製品化

ものづくりで発展を遂げてきた日本は、優れた技術の蓄積が「資源」だ。ところが現在認められている特許146万件のうち、利用されていない特許は71万件もある。特許庁調整課の澤井氏はこう語る。

「使われていない特許の中には、他の会社や業種なら使える場合がある。いろいろな形で技術をマッチングさせていく試みが大事」

2015年1月20日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、そんな「埋もれた宝」に光を当てて生かしていこうとする取り組みを追っていた。

キーボード用に開発された抗菌技術を布地に応用

「チタンアパタイト」の説明(富士通研究所のウェブサイトより)

「チタンアパタイト」の説明(富士通研究所のウェブサイトより)

情報通信機器大手の富士通が持つ10万件の特許の中には、製品化に結びつかなかったものも数多くあるうえ、特許維持にかかる費用は年間数十億円にものぼり負担となっていた。

そんな特許技術の利用を促すために、知的財産権本部の吾妻勝浩氏(53歳)は各部門にヒアリングを行っていた。道路交通情報システムの開発に携わってきた経験から、技術者の気持ちを知る吾妻氏は、

「発明した技術者や研究者は、社内ではなくても技術が使われて製品になれば、かなりモチベーションが上がる」
「先輩方がいろんな技術を使って作った試作品が、富士通のたくさんの事業部に宝として眠っている。それを発掘して外の皆さんに使ってもらうのが私たちのミッション」

と語り、社外にも特許技術を開放する方針を明かした。

この呼びかけに、全国の自治体から「地元の中小企業で使わせてほしい」との依頼が殺到した。吾妻氏は和歌山県の林撚糸に「チタンアパタイト」という抗菌作用のある粉を織り交ぜた糸や布ができないかと相談した。富士通ではキーボード用などに開発されたが、「価格に見合うだけのニーズがない」と製品化されなかったものだ。

林撚糸は和紙から糸を作る独自の技術を持っており、4代目社長の林雄太氏(28歳)は亡き父が残してくれたノートと共に苦心しながら糸を作り上げ、地元のニット工場とも協力し抗菌作用のある生地の開発に成功した。

実験成功「3日着たポロシャツも臭わない」

林氏はこの生地で作ったポロシャツを自ら3日間着用し、富士通の吾妻氏に「匂わないです」と嬉しそうに報告した。抗菌作用があって綿より軽く、吸水性にも優れたこの生地は「ワシテックスFT1」という名で新商品となった。

今後は飛行機の座席シートやスポーツウェア、医療の現場や宇宙飛行士が着る服など期待が広がる。特許の使用料として売り上げの数パーセントが富士通に入る仕組みだ。

吾妻氏は「JAXAがダメならNASAにでも(営業に)行きますかね」と嬉しそうに笑っていた。巨大企業の埋もれた特許が町工場の技で生かされ、形になった瞬間だった。

番組ではオフィス事務メーカーのキングジムが、すでにある技術を活用したアイデア商品を開発する様子も紹介した。これまでキングファイルやテプラが会社の屋台骨を支えてきたが、書類をパソコンに保存する時代に危機感を持って始めた転換だった。社長の宮本彰氏(60歳)は、

「基本からやっていては間に合わない。確立された技術を上手に使って、キングジムらしい商品を作る。それが当社のビジネスモデル」

と説明。「10個に1個売れればいい」「ダメ元でやってみるのが基本方針」ということで、出されたアイデアは1人でも賛同すれば商品化されるという。

ソニーからの転職組も活躍するキングジム

2年前にソニーから転職してきた開発本部の平山昌俊氏(38歳)は、マグネット不要の掲示板を開発し、半年で1万台を売る大ヒットを生んだ。現在は太陽や電灯の光をためる蓄光技術を使い、「暗闇で光る文字が書けるペン」を開発中だった。

蓄光シートで特許を保有する京都のエルティーアイと協力関係を結び、製品化に向けて奮闘していた。平山氏は試作品を作りながら、「自分の考えたアイデアを形にする、作っている時が一番楽しいですね」と笑顔で語る。

企業同士が垣根を越えて、互いの知恵や技術を生かす動きは今後も活発になっていくだろう。それには、自前だけにこだわらず提携をよしとする度量と、うまく利用し合う器用さをもつ企業が生き残っていく時代なのだろうと感じた。(ライター:okei)

あわせてよみたい:「クロネコメール便」が3月末で廃止の衝撃

 
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