「誰かに会いたい!!」「金曜日なのに全然ワクワクしない……」――。在宅勤務中の”あるある”を題材にした漫画『在宅勤務子ちゃん』がネット上で話題になっている。
主人公は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅勤務に切り替わった会社員の女性。作中では緊急事態宣言が明け、再び出社体制に戻るまでの50日間をコミカルに描いている。キャリコネニュース編集部では、作者で漫画家の一秒さんに作品の背景などを聞いた。
「お昼なに食べた?」「最近ドラマ何見てる?」的な”どーでもいい話”がしたい
『在宅勤務子ちゃん』は、一秒さんが5~6月にわたりツイッター上で連載。主人公のタク子は在宅勤務が始まるとすぐに「仕事しながらお菓子食べれる」「好きな時に寝れる」「化粧やオシャレもしなくていい」などと浮足立つが、在宅勤務が長期化につれて徐々に”在宅疲れ”を実感していく。
11日目には、仕事相手との電話の様子を描写。タク子は、用件が終わると「あのっ…!!」と言い掛けるが、そのまま「失礼しま…す」と電話を切ってしまう。次のコマでは
「…はあ。言えるわけない。ただの仕事相手に…ましてや電話で『雑談しませんか』なんて…」
と話し相手のいない在宅勤務のつらさを吐露。本当は、誰かと「お昼なに食べた?」「最近ドラマ何見てる?」といった”どーでもいい話”がしたかったようだ。
さらに、43日目には窓の外から聞こえてきた、在宅勤務中の隣人の声を描いている。”ハイ!!了解です。その方向で進めさせて頂きます。失礼します!”という声に、
「近くに仕事がんばってる人がいるとやる気出るなー」
と感じるタク子。だが、次のコマでは、隣人の”チッ。あのクソ野郎…ざけんなよ…ブツブツブツブツブツ”という独り言も聞こえてきて、顔面蒼白になっている。
会社員から共感の声が寄せられる一方で意外な反応も
一秒さんは『在宅勤務子ちゃん』を描き始めたきっかけについて、
「完全なる思い付きです。SNS上で毎日連載する漫画を描きたいな、と思って始めました」
と振り返る。緊急事態宣言の発令などにより、ちょうど話題になっていた”在宅勤務”をテーマに選んだ。「最初は2週間くらいで終わるかな、と思ってましたが」と語った一秒さんだが、在宅勤務をテーマに意外と深堀することができたことで50話まで続けることができた。また、
「私自身漫画家で『在宅勤務』が日常に近いということも描き始めたひとつのきっかけです」
と自身の仕事が元々、在宅勤務に近かったことも題材に選ぶきっかけになったようだ。
また、作中に登場する在宅勤務の”あるある”はほぼ実話だ。一秒さんは
「私自身やSNS上での会社員の嘆きを参考にしています」
と明かす。一秒さん自身が実際に体験したネタが主ではあるものの、SNSで”あるある”ネタを募集して参考にした部分もあるという。また、作中の登場人物については「モデルはいません」ときっぱり。ただ、「明るくて楽しいキャラクターがいいなと思ってました」と話す。
「緊急事態宣言もあり社会全体がどんよりしたムードでしたので、せめて漫画内では感情が揺れ動くのを楽しんでもらいたいと思い元気系のキャラにしました」
という一秒さんの思いがあったようだ。
連載の反響は大きく、ツイッターのフォロワーは3000人近く増えた。連載中からリプライなどで多くの共感の声が寄せられていたという。
一方で、面白いのは「まったく共感できなかった」「会って話したい同僚や友達がいる人生が羨ましいなと思いました」など”共感できない”とする声も多いことだろう。一秒さんは
「驚いたと同時になるほどな、とも思いました。在宅勤務子ちゃんは外向型の性格でずっと家にいるのがつらいタイプです」
と印象を語る。確かに「雑談ができなくてつらい」などは外向的な人間の悩みであり、それ以上に家から出なくていい在宅勤務のメリットを感じていた人も多いだろう。一秒さんは「コメントでいろんな視点を教えて頂きましたので、今後の作品作りに活かしていきたいです」と話していた。