小中学校などが休校となり、本来なら給食に使われるはずだった牛乳などの乳製品をどう消費するかが課題になっている。農林水産省も乳製品の消費を呼びかける中、ツイッターで牛乳消費レシピとして提案されたのが蘇だ。
蘇とは、古代の日本で作られていた乳製品で、主に貴族が食べていたと言われている。作り方は「牛乳を煮詰めて、固形物になるまで水分を飛ばす」と至ってシンプル。ということはキッチンで仕事をしつつ、鍋で牛乳を煮ればいいんじゃないだろうか。
キッチンに簡易机と仕事道具を設置し、リモートワークしながら鍋で1リットルの牛乳を煮ていく。この間、通常業務を行っていた。牛乳が温まり、乳児のような甘いミルクの匂いがしてくる。この中で仕事ができるのは幸せだ。
しかし牛乳が沸騰。弱火にして煮続けるが、膜が張るので適宜ヘラでかき混ぜなければいけない。チャットを同僚に送り、待つ間は本格的に鍋を混ぜていた。甘いミルクの匂いが、段々強くなる。15分後には少し牛乳がもったりして乳臭くなった。
30分後にはクリームソースの匂いになった。牛乳しか入れてないのにしょっぱい匂いが!? と思い成分表を見ると、牛乳には100ミリリットルあたり0.1グラムの食塩が入っているとのこと。煮詰めたことで塩分濃度が高くなったようだ。
食感はカッテージチーズ、味は甘さ控えめのミルキー
仕事をしては牛乳を混ぜ、を繰り返して1時間、牛乳はホットケーキの種のようになってきた。この時にはすでに鍋のふちについた牛乳はカピカピになっているので、スプーンとヘラでこそぎ落とす必要が出てきた。
牛乳は一瞬目を話すと膜ができており、頻繁にかき混ぜなければいけない。牛乳相手ですら仕事が滞るのに、育児をしながら仕事って無理じゃないか……? と思い始める。全国の育児をしながら在宅ワークをする人は本当にすごい。私は絶対ムリだ。
最後の20分は蘇にかかりっきりだった。水気が飛び、ねりけしのように固まっていく。一方で、鍋についた部分も取らなければいけない。パソコンを見ている暇がない。今回、業務中の蘇作りは上長に許可を得て行っていたが、チャットの反応が鈍くなるので普通に仕事をしていないことはバレるだろう。
トータルで80分ほど煮詰めて、小さなおにぎりほどの蘇が出来た。温かいうちにラップで包み、成形する。
食べてみるとカッテージチーズのような食感で、甘さ控えめのミルキーといった感じ。おいしいし、牛乳ってこんな甘いんだ、という驚きがあった。少し感じる塩気が甘さを引き立てているように思う。
蘇を切ってはちみつをかける「蘇蜜」にしてみた。食感のせいだろうか、きなこ棒のようだった。はちみつ入りミルクとはまた違った味になるのが面白い。今回は牛乳のみで作ったが、砂糖を入れて甘さを調節することもできる。
蘇は美味しかったが在宅ワークをしながら作るものではない。ずっと鍋をかき混ぜ続けなければいけない。在宅ワークは当然ながら仕事時間。空き時間を活用しようなどと考えず業務に励むべきだろう。蘇は時間のあるときに作ろう。