今回の境界線変更は、全9回計画されている行政境界変更事業の7回目にあたる。町田市の担当者に、事業の終了時期を聞いたところ、
「1期4年の最短8年と考えているが、境川の河川改修が遅れている関係でさらに2~3期に分ける可能性も見えてくる」
と回答。つまり、2倍あるいは3倍の時間を見込んでいるという。
こうした境界線変更の必要性については、やはり飛び地の解消を挙げる。同担当者は
「これまで『郵便物が届きにくい』『(市境をまたぐ場合)家を建てる時に両市に申請が必要』といった住民側の不便や、ゴミ収集、水道といった行政側の問題もあった。(改修後の)境川の中央に境界線を引くことで、こうした不便が一通り解消する」
と説明。現状では、町田市のゴミ収集車が相模原市内を通って市内を回っており、水道施設については神奈川県のものを借りて運用しているという。
自治体変更に転校……反対する住民も
今回の境界線変更に伴い、住所が変わる地域の多くは駐車場用地や道路、河川敷など。1世帯4人の住居も含まれているが、すでに合意済みだという。
住所が変わると、加入する自治体が変わるほか、通学する学校にも変更が生じる。これまでにもこうした理由から反対した住民は一定数おり、境界線変更を断念した地域もあった。両市は、住民に対して金銭の補償を行わないとしながらも、銀行での住所変更や警察署での免許記載事項の変更、転校の手続きなどを可能な範囲で支援することで、合意を得られるよう努めている。
両市の境界をめぐっては、境界線の一部が重なるJR町田駅南口の上りエスカレーター(相模原市管理)と下りエスカレーター(町田市管理)が、2011年3月の東日本大震災発生時に稼働・停止の対応で分かれたことでも話題になった。
同担当者によると、同駅周辺の境界線変更も全9回の行政境界変更事業に含まれていたものの、周辺住民の反対があったことから現在も変更できていないという。
今年12月に実施が決定している境界線変更については、19年12月に開催された定例市議会に議案が提出され、全員一致で可決された。