新型コロナ感染拡大前は、「人手不足で常時、手配師(人材斡旋をする人)の車が新センター前の駐車場にズラッと並んでました」という。しかし緊急事態宣言後はガラリと変わった。
「感覚的に求人件数は4割減でしょうか。マスク品薄の時にセンターを覗いたら『マスク持参じゃないと雇えん』というのを聞いて、こりゃ厳しいなと思いました。今はマスク必須の求人はなくなってきていますが、求人数は激減したままです」
センター経由の日雇求人は、基本的に一般土工、鉄筋、解体が多い。ほかには造園作業、重い荷物を扱う倉庫作業などがあり、「練度の高い現金仲間(仕事仲間)はレーキマン(アスファルト舗装)や鍛冶工みたいな上等な仕事があります」と話す。
「私はそういう有資格者でもないし、中途半端だから上等な仕事は出来ない。ちょっとの間ガードマンやったろかなと、先日求人を見にいったら実働8時間8500円で、寮費が1日3500円とあって嘘やろって……こんなくさい仕事なんてやってられるか!って思いました」
この状況について、「リーマンショックの頃の水準ですよこれ、自分がドヤに流れ着いた時を思い出して涙出そうですわ。これならゴミ回収してたほうがマシです」という。
“中の人”自身は現在定住しているが、過去には、簡易宿泊所に住民票を置いて6年ほど日雇労働をしていた。それ以前は工場で期間従業員として働いており、リーマンショックで雇い止めとなった。
「資金が底をついて親にも言えずネット喫茶を転々とした後、流されるままドヤ(簡易宿泊所)街に来ました」
「外出自粛に耐えれなくなったおじいさんたちが一斉に出てきました」
新型コロナの流行当初、影響はそこまで受けなかった。ただ、「ゴミ収集はコロナで忙しくなったんですが、暇になった他の関連会社からこの仕事に人が殺到しました」という。
「仕事の喰い合いに巻き込まれ私は暇になってしまいました。実はそれまで動画制作があまりできていない状態だったので、暇になった分をYouTubeの動画収入で補おうと制作を再開しました」
トータルの収入は「前よりいい」と明かすものの、「バーチャルユーチューバーやってなかったらエライコッチャなことになってたでしょうね」とこぼす。
コロナ以前、あいりん地区は日雇い労働者だけでなく、海外からの観光客でも賑わっていたという。緊急事態宣言発令で人がいなくなり、”半分ゴーストタウン”になったが、「少ししたら外出自粛に耐えれなくなったおじいさんたちが一斉に出てきました」とのこと。
「三角公園(萩之茶屋南公園)とかでお喋りや、ちょっと言えないことをする人が出てきて、まだこんなに街の人間おったんか…って思いました。あいりん地区自体がこれからどうなるか分かりませんが、何も起こらずにいい感じに収まってくれたらなと思ってます」
バーチャルユーチューバー「日雇礼子」の活動は今年で2周年となった。6月8日現在、ライブ配信を含め35本の動画を投稿している。1か月以上投稿が途切れることもあり、「時折消息不明になったりしてますが、これからもなんとかやっていきたいです」と語る。
「原付も買いましたし、コロナが落ち着いたら今後はあいりん以外の西成区の街を色々まわりたいです。どうも西成区全体をスラム街だと思ってる人がかなりいるみたいなんで、こういういい感じの街もあるんだよーと紹介していきたいです。天神ノ森とか。行動制限が解除されるまではウーバーの仕事レポとか凌いでいこうと思います」